Kickstarter は2年でどれだけクリエイターを助けたか

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on TumblrShare on Google+Email this to someone

復活!最初のエントリは、WEBサービス Kickstarter について書きたいと思います。

なんでか知らないけど、ここ最近 Kickstarter を超ウォッチしてます。ちゅうても、実際に使うのではなく、その場で行われる人々の行動の傾向、そこから何がおきようとしているのか、そういうところに関心があるのですが。

初めて書くので、まずはKicstarter の概要実際どれだけ実績があるのかというとことろを紹介したいと思います。

クラウド・ファンディングとは

まず、Kickstarter(以降、KSと略します)とはなんぞや、ですが。

KS とは、クリエイター/アーティスト対象のクラウド・ファンディング・サービスです。クラウド・ファンディング(Crowd Funding)っていうのは、何かプロジェクトを立ち上げる際必要な資金を、これまで少数の企業/個人の(1社/1人あたり)多額な投資によって集めていたのを、「多くの個人」から「少額の支援」を集めようというもの。理論上世界中から支援を受け付けられるネットとその決済を利用することによって一気に現実的になったサービスで、たぶん今、一番有名なのは今回取り上げる KS ですが、日本でも今年になって CAMPFIRE(6月ロウンチ)とか、READYFOR?(3月ロウンチ)とかいろいろ出てきています。KS だって2009年4月からなので、まだまだ新しいサービスですね。

もちろん、こういった仕組みは昔からいろいろあるけど(例えば、ミュージシャンへのファンドを中心としたミュージック・セキュリティーズなんかは10年以上あるサービスです)、KS を中心とした最近のサービスに共通しているのは、見返りが金銭という「投資」ではなく、金銭以外のもの・・・限定の制作物だったり、クローズドなイベントの権利だったり、というところなのかなと思います※1

つまり、プロジェクト立ち上げ側からしたらお金集めの場なんですが、支援する側はお金以外のインセンティブが働いている、、ということ。ここに関しては後でも触れます。

KS はこのクラウド・ファンディングをクリエイターやアーティストの資金調達に特化しているサービスなんですね。

ざっと仕組みを説明すると、まず、クリエイターたちは、資金が欲しいなと思った時に KS 内にプロジェクトを立ち上げ、動画とテキストで自分たちが何をやろうとして、どのくらいお金が必要なのかをアピールします。”いつまでに(プロジェクト立ち上げ日から30~90日の間で設定)””どのくらい資金が欲しいか”の目標をかかげ出資者を募るわけですが、その際に「Pledge」と呼ばれるプロジェクト出資者への「見返り」を設定します。ちなみに、KS 上では出資者のことを「Backer」と呼ぶんですが、1ドルの Backer にはこれ、10ドルの Backer には、、、100ドルの Backer には、、、と、出資額の多寡によって見返りを変え、最高1万ドルぐらいまで提示していきます。

※ここの「Pledge」の幅と内容が結構肝のようで、それに関しては別エントリでいつか書く予定。

で、最初に設定した期間内に目標額を達成したら、プロジェクトを立ち上げたクリエイターは集めたお金全額をゲット(目標額達成後も期間終了まで集められるので、目標を遙かに超える多額な資金を得る人もいます)、達成できなかったら0(all or nothing)。もちろん、支援した方も支援プロジェクトが達成しなかったら、見返りをもらえないわけです。原理はグルーポンに代表されるフラッシュ・マーケティングと同じですね。

2年間の支援額とプロジェクト数

ま、聞いた感じ面白そうなんだけど、実際どのくらい使われていて、どのくらい成功してて、どのくらい儲かっているのよ? というのがまず気になるところだと思うので、早速そのあたりのデータをご紹介しておきます。

ちょうど、ロウンチから2年たった今年4月28日に、Kickstarter がここで公式に今までのデータをいろいろ公開しております。

■2年間の支援額(Pledge)

KS_pledge

  • トータル:$53,107,672-
  • 成功プロジェクトを支援した額:$40,000,000- →実際に KS の売上となるのはこの中の手数料5%
  • 失敗プロジェクトを支援した額:$7,000,000- →集めたけどパーになった額(ノД`)
  • 進行中プロジェクトを支援している額:$6,000,000- →たぶんこの中から85%ぐらいが成功するはず
  • 成功率:85% ※成功額(40M)÷(支援全額(53M)-進行中(6M))

月毎の支援額の経過はこんな感じ。昨年末既にちと停滞してるけど、今年3月ぐぐっとのびてますね。

110809_02

■2年間のプロジェクト数

  • トータル:20,371
  • 成功:7,496
  • 失敗:9,700 ※内、1ドルも集められていないプロジェクトは21%(約2,000強)
  • 進行中:3,175
  • 成功率:43% ※成功数÷(トータルー進行中)

ちなみに、2011年6月の情報によると、週2,000ぐらいの応募がある中、応募の時点で不採用となっているプロジェクトが40%あるらしい※2。そのうえでのこの数字。

上の支援額のデータをあわせると、プロジェクトの 43% に 85% のお金がいっているわけで、当たり前なんですが、大多数の人が成功プロジェクトに支援していること。目標額が違うのであまり参考にならない数字ですが、一応単純計算してみると、成功プロジェクトは平均 $5,300 集めており、対して失敗プロジェクトの方は、そのうち1ドルも集められていない21%をのぞくと、平均支援額は $913。やっぱり、だいぶ違いますね。

プロジェクトが成功にぐぐっと傾くティッピング・ポイントや、その成否を分けるポイントは、これまた別エントリでいずれ書きます。。
でもって、月毎のプロジェクトの推移のデータも引用しておきます。

110809_03

見ず知らずのクリエイターを支援する人たち

では、支援した人はどのくらいいたのか。それを示すデータがこちらです。

■2年間の支援者(アカウント)数(Backer)

  • トータル:591,773
  • 2回以上支援している数:79,658(13%)

なにげに私が一番おお!と思ったのはこの数字です。

現実的に考えて、いくらネット上で集めるといったって実際の支援者はリアル友人がなってくれる可能性がすごく高いでしょう。見ず知らずの人にお金を支援するアクションはよほどのことがないと取りづらいけど、逆に友人知人であれば Facebook やメールでお願いされると「まあちょっとだけ」と思いますよね。でもって、KS でプロジェクトを立ち上げる友人知人が2年間で何人もいる、って状態の人は、まだ少数だと思うわけです。

となると、2回以上支援している 13% のうち、少なくとも 10% ぐらいは「友人・知人以外」見ず知らずの人のプロジェクトに金銭支援をしているということではないでしょうか。これって、結構すごくないですか?

110809_04

たしかに、6月末ぐらいからずっと KS ウォッチャーしていて、データもとったりしてたんですが、いるんです、一人で何十、何百ものプロジェクトを支援している人が!
そして、どでかく資金を集めているプロジェクトは、そういうプロシューマーならぬ「プロ Backer(←笑)」にきちんと支援されていたります。

プロ Backer! まさに、彼等の存在、彼等を駆り立てるモチベーションってなんなんだろうというところが KS(とかクリエイター系クラウド・ファンディング)に対する私の最大の関心のひとつだったりします(他にもいろいろあるんですが)。

KS がグルーポンと違うのは「今ないもの(=価格がないもの)」が対象ということ※3。このエントリも最初に「プロジェクト立ち上げ側からしたらお金集めの場なんですが、支援する側はお金以外のインセンティブが働いている」と書いたけど、人の心意気だったり、ちょっとかっこつけて言うと未来だったり、そういう”今ないもの”や”人自身”に積極的にお金を払おうとする人たちを既に7~8万人おさえているというのが、KS の今後の資産になっていくのではと、私はそう思ってます。

110809_05

実際、支援額のところに書いたけど、手数料5%なんで、進行中プロジェクトに支援している額の85%をいれたとしても、単純計算で2年間で KS 自体の売上は225.5万ドル。
サービスの内容からするとすごいと思うけど、とはいえそれほど大きな規模ではないし KS 自体はニッチなサービスであることは変わらないと思うけど、コミュニティ・ビジネスの新しい視点として、なんらかのヒントがあるのではないかなあと感じている次第。もちろん、アート・マネジメント分野を学んでいた視点からすると、アーティスト活動の新しいあり方としての可能性は言わずもがなですね。そっち視点からのエントリもかきますよ(こればっか)

しかもですね、おそらく Backers の心理は「支援」とか「寄付」とかそういう100%善意ではなく、ギャンブルっぽさとか他で買えないものをゲットするちょっとした優越感とか、そういうものだと思うんですよね。つまり、「がんばって」ない。
KS のようなサービスはニッチかもしれないけど、そこにある心理自体はそれほどニッチなものでもない。
そういう意味では、芸術団体の通常の資金調達にも大いなるヒントがあるんじゃないでしょか。

とゆーわけで、明日は、KS の中でももう少しアート(ファイン・アート)の実例と課題というか注意点に突っ込んだ話を書きますべか。でも、まだ次のエントリは一行も書きだしていないのでまだ不明。
今回は公式データだけど、ウォッチして貯めた独自データも分析して公開したいす(゚∀゚)

さて、「8月平日は毎日エントリしよう」達成まあと16回。昨日から始めたばかりですけどね笑

※1:はてなキーワードにはこんなふうにかかれてます。(まだ日本のwikiはないっぽい)
クラウド・ファンディング
KS 等は基本購入型、+別に見返りいらないよ、という人は純粋に金銭支援だけするという寄付型も合体しているという感じ。
似た感じで言われるワードとしてはマイクロ・ファイナンスがありますが、こちらはグラミン銀行に代表されるような本当に金融の仕組み。
ちなみに、購入と寄付の境界について書かれた記事はこちらがよくわかるのでご参考あれ
購入と寄付の境界線 ~ Kickstarterに垣間見る境界線のゆらぎ

※2:不採用になる理由は、クリエイティブに関係のない題材(チャリティ等)だったり、目的が曖昧なもの等

※3:クリエイターがハンドメイドのものを販売する etsy のようなECサイトとも、「今ここにモノがない」点が違いますね。

[参考資料/サイト]
Happy Birthday Kickstarter!
What percentage of project ideas get denied on Kickstarter? (会員制サイト)

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on TumblrShare on Google+Email this to someone
記事トップに戻る