「少額×大人数」が「多額×少人数」に勝つ資金調達コミュニティ

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前回の続きです。

前回は、Kickstarter(KS)で創作のための資金調達ができるのはいいけど、

一回こっきり単発で調達をしてその後どうなるのか? 
ずっとこれを続けていくのか? 
それってクリエイター、アーティストにとってどうだろう?

というような問いかけの元、KS で資金調達(絶版本の再版&iPad バージョン制作)に成功したクレイグ氏のエントリを紹介しました。

彼は単に KS を利用して「数冊売れればいい」と思っていたわけではなく、この調達をきっかけに新しい出版ビジネスの実現に近づくことを当初から考えていたこと、つまり、「短期の制作資金調達」ではなく「中長期のためのシードマネーの調達」と KS を捉えていたことをブログ内ではっきり明言しています。
そして、それこそが KS の可能性だと。

私もこの考え、激しくアグリーです。というか、そうこなくっちゃ!という感じ。これはつまり、アーティストやクリエイター側にある程度事業の考え方が必要になるということで、誰もができることではないし、しなくてもいいし、それこそ「アート・マネジメント」が必要なところかもしれません、、が、それは今回はおいといて。

ただ、ここで事業の視点を入れる、だけでは、まあ、シードマネーを大人数から少額で獲得するシステム(マイクロ・シード・キャピタル)としてのクラウド・ファンディング、ってだけの話になっちゃいますが、クレイグ氏のエントリの中ではもうひとつのキーワードがあります。

それが「コミュニティ」。

KS は単に資金を調達しているだけではなく、プロセスを通じてサポートのコミュニティを作っているということ、そして、プロジェクト立案者は調達期間を通じて強いコミュニティを作っていくことが重要なポイントだ、とクレイグ氏は何度か言及します。

同じ成功プロジェクトでも……

では、KS(およびクラウド・ファンディング)における、および ”ならでは” の「強いコミュニティ」とはなんでしょうか。

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うーん、と考えていて、ふと、成功プロジェクトと失敗プロジェクトの間に大きな差があることはもちろんだけど、成功プロジェクトの中でも「ちょっと達成したもの」と「大幅に達成したもの」は、違う現象の中にあるのではないかと思いました。

いつか改めてエントリすることもあるかもですが、各プロジェクトの動向、特に「Ending soon(もうすぐ調達期間終了)」のページを定期的にみていると、最後の最後で追い込みをかけて達成するプロジェクトがすごく多いです。↓このエントリによると、締切5日前までは 20% のプロジェクトしか成功(目標100%達成)していないけど、あと1日2日、というところになると成功プロジェクトの割合は50%までになるとか。

これは、プロジェクト担当者が今までの資金調達分を無駄にしないためにも、なんとか目標 100% までにもっていこうとめちゃくちゃ頑張っているからでしょう。実際、KS でムービー制作の資金を調達した Miao Wang さんは、「もし残り1日になっても達成しそうになかったら、家族に借金して到達すればいいわ」と高めの目標額設定にした、と自分のブログに書いています。

まー、そういう人多いでしょうね。私もそうすると思いますw

かたや、そういった努力をせずとも途中で100%を越えられたプロジェクトも存在するわけです。(今までこのブログで紹介した事例はすべてそうです)彼らは、1日前になって家族、知人に頼みまくったり、下手したら自腹をきったり、などということはしなかったでしょう。

つまり何が言いたいかというと、同じ「KS の成功プロジェクト」と言っても、大幅に成功したものとギリギリ目標達成したものに分かれ、そのうちギリギリ達成のものに関しては、資金調達プラットフォームとしては KS を有効活用できたけど、クレイグ氏いうところの「強いコミュニティ」まではできていないのではないか。

大成功プロジェクトと小成功プロジェクトの間の明らかな差

それをいくらかでも証明できないかと、以前のエントリでも引用したことがある 2011 年7月の「Fine Arts」内の「Reccomend」カテゴリにアップされていたプロジェクトのデータを引っ張り出してみました。限られた期間、カテゴリ、かつ独自でとったデータなので、全体にあてはまることはないと思いますが、ある傾向はわかるかもしれない。

2011年7月に同カテゴリ内で成功したプロジェクトは 22、失敗は5 です。(レコメンカテゴリだけあって、失敗率が少ないと思います)さらに、成功カテゴリのうち、150%以上の目標達成率だった 7 プロジェクトを「大成功」プロジェクト、150%未満の 15 プロジェクトを「小成功」プロジェクトと仮にしてみました。

「大成功」「小成功」「失敗」プロジェクトを比べてみたのが下記データです。

プロジェクト種類による比較
支援者数平均 複数支援者の割合 一人あたりの支援額 購入率 いいね!数平均
大成功 174名 58% $73 90% 808
小成功 88名 44% $81 80% 259
失敗 45名 38% $65 63% 236
  • 支援者数平均=1プロジェクトあたりの支援者数平均
  • 複数支援者の割合=全支援者中、2回以上 KS で支援した経験がある人の割合
  • 一人あたりの支援額=支援額全体から支援者数をわった額
  • 購入率=支援額全体中、見返り購入による支援の率(詳しくはこちらのエントリで説明しています)
  • いいね!数平均=1プロジェクトあたりのFacebook の「いいね!」をおされた数平均

うーむ、何度もいうとおりそこまで厳密なデータではないことをお断りしておきますが、一応、綺麗に並びました。

まず支援者数。みてのとおり、成功しているプロジェクトほど支援者が多い。
複数支援者の数。大成功プロジェクトほど、「KS で何回か支援したことが既にある人たち」=プロジェクト立案者とは他人の可能性がある※1割合が増えています。
ひとつ飛ばして購入率、こちらは「Kickstarter 成功/失敗データからみる「新しさ」」のエントリでいろいろ書いたので詳しくはそちらを参照していただきたいですが、やはりここでも達成率が高い、より成功しているプロジェクトほど「純粋な寄付」ではなく「見返り購入による支援」の率が高いことがみてとれます。
支援したかどうかにかかわらず、何か心にくるものがあればおされる「いいね!」の数も、大成功プロジェクトが圧倒的に支持されている。

そして、最後に注目したいのは、「一人あたりの支援額」です。

これだけ、大成功プロジェクトより小成功プロジェクトの方が高い支援額になっている。
これは何を意味するのか?

支援者数とあわせてみると、大成功プロジェクトほど、多くの人が少額を支援していることになります。

これに複数支援者の割合も考慮にいれると、なんとなーーーくですが、

「プロジェクト立案者とは他人のベテラン支援者(KS での支援好き?)が、なんとなくプロジェクトに共感して、少額ずついれていく」

そんなプロジェクトほど、KS における大成功をおさめるプロジェクトなのでは、というようなイメージが浮かんできませんか。

つまり、すっごい乱暴にいうと、

少額×大人数>多額×少人数

なんです。(超乱暴です。多額×大人数がいいにきまってますし、そういう大成功プロジェクトもあると思いますが、あえて面白く考えてみるためにw)

今までの資金調達は、どちらかというとコアとなる少数から一人あたり多額の資金を調達すること「こそ」が成功の近道と考えられていたと思いますが、KS 上では、それとは反対の傾向が出ている。

こここそが、クレイグ氏いうところの「強いコミュニティ」の正体のしっぽ(まだ全部は見えていないw)であり、クラウド・ファンディング・サービスの新しさ、可能性なのではないでしょうか。
ちょっと私、しばらくそんな仮説を立ててみたいなと思います。

そして、実は Kickstarter のような特化サービスもいいけれども、Facebook や mixi や既にコミュニティができているところにこそ、すごく親和性があるのではないかなと思っています。
だいぶ前に KS 自体はニッチなサービスかもしれないけれど、心理には普遍性があるのでは、と書いたのはこのあたりの考えにもつながっていきます。でも、考えは全然まとまってません orz

さてさて、またもや時間がなくなりました。

ここからどう発展させていきましょかねーー(笑)。
おっきい話になりそうなので、また明日は全然別の話題を書くかもです。

※1:1回しか支援したことがない人=このプロジェクトで初めて支援した人は、プロジェクト立案者の友人・知人・親戚関係が多く含まれると考えられ、ゆえに2回以上経験者は KS 自体に関心をもっている人の割合が多いと仮定しています。

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