「権利」と「ゲーム性」:クラウド・ファンディングと今までの支援の決定的な違い(1)

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昨日の続き

前回のエントリでは、社会貢献活動団体のために広告出稿代を WEB で集めるサービス LoudSauce.com を紹介したうえで、

個人的には、このサイトを見つけた時、「面白い!ちょっとやってみたい!と反射的に思ったけれども、同じ企画(社会貢献活動団体が広告出稿するための寄付)を、たとえば新聞のPR欄や DM で知っても、よほどのことがないかぎり、関心も沸かず、支援などこれっぽっちも考えなかったのでは?

と書きました。

ではなぜ私は、LoudSauce.com であれば支援してみよっかなと思ったけど、新聞や DM で知った場合は関心が沸かなかったのかしら?その理由に、クラウド・ファンディングの資金調達手法の優位性があるに違いない、ということで今回はそのことを書きます。

クラウド・ファンディングと寄付における心理の違い

手っ取り早く、クラウド・ファンディングを介した支援と、新聞や DM 等で知った場合・・・つまり、従来の団体への寄付(主にパーティ等の Face to face ではなく、WEBも含めたメディアで知る場合を想定)の時における心理等を、「あくまでも、(なけなしの経験から思い起こす)私個人の感覚」であることをお断りしつつ、ざっと比較してみたいと思います。

クラウド・ファンディング支援と従来の寄付・比較
過程 クラウド・ファンディング 寄付
導入 ・何を目標としているかわかる
目標金額と現時点での達成率がわかる
・いつまでが期限かわかる
どのくらいの人が既に協力しているか/否かがわかる。
・何を課題としているかわかる(たまにわからない場合もある。。)
・目標金額がわかる場合もあるが、「集められるだけ多く」の場合も多い
・期限が設定されていない場合も多い(「いつでも受け付けます」といった感じの)
現時点での他の協力者はわからない場合が多い
支援 ・多くの場合見返りの「購入」
目標達成していない限り、購入の約束のみであり実際のお金は被支援者へ行っていない
金銭の寄付
寄付した瞬間からお金は被支援者側へ
経過 ・いつでも目標を達成したか否か(自分の支援が有効になったか否か)、リアルタイムの目標達成率がわかる ・基本的にリアルタイムの経過はわからない。被支援者に託す
達成 ・WEBにアクセスすれば、いつ、どのくらいで達成したか/してないかわかる
・達成した時の気分は→「ヤッター!(高揚)
・基本的には被支援者側の報告待ち
・目標がないので「達成」という感覚もあまりない
・(仮に)多く集まった報告をみた時の気分は→「よかった!(安堵)」(「多い/少ない」も主観である)

いかがでしょう。
まあ、みてのとおり、だいぶプロセスや設定に違いがあるわけです。

従来の寄付や支援活動にはない、クラウド・ファンディングの大きな特徴は「権利」と「ゲーム性」という感覚だと思います。

まず「権利」感覚の話からすると、
クラウド・ファンディングは、基本的には投資のような金銭の見返りはなく、特に LoudSauce のような社会貢献に関係しているものや、Kickstarter でも「利他主義(こちらのエントリをご参照ください)」のものは、「支援してあげたいな」という感覚が必ずどこかにあります。そのあたりは、きっと従来の寄付と同じ感覚です。

しかし、ここで「購入」というアクションが入ることで、どれだけ支援の気持ちがあったとしても、おのずとそのものに対して「権利」を有するという感覚がうまれるのではないかと思います。(このあたり今は感覚で書いていますので、もっと自信をもっていえるよう勉強したいですが)

「権利」には「主張する」や「行使する」という動詞がすぐに思い浮かぶとおり、自分ごとにする力があると思います。クラウド・ファンディングの場合は、達成しないとその権利は失効しますから、権利がうまれる=達成するまで、そのプロジェクトは「自分ごと」になるわけです。しかも、主体的に WEB にアクセスする気さえあれば、いつでも何回でもリアルタイムで状況をチェックすることができる。

それに対し、寄付の方は、なんというか団体なり人なり志なり、何か”向こう”にあるものに対して「あんたに託した」「あげたお金ですから」感が少なからずあります。もちろん、きちんとどのように使われたかどうかは気になるところですが、どこかお金が「向こうへ行ってしまった」感はあるかと。その団体等に信頼があればあるほど、ある種の「放棄」が行われるわけです。

そういう意味でいうと、クラウド・ファンディングの方には、そこまで相手に対する「信頼」はなくても出来てしまう行為なのかも?
このへんは超仮説ですが、「少額×大人数」が「多額×少人数」に勝つ資金調達コミュニティ というエントリでも触れた、「従来のように深い関係がある少数が多額を入れるよりも、思い入れがそれほどあるわけでもない大人数が少額を入れる方が成功しやすいシステムなのか」というこれまた仮説にもつながるところであり、個人的に大変興味深いところです。

とにかく、クラウド・ファンディングが投資とも寄付とも違うユニークなところは、動機は共感だったり支援だったり、どちらかというと寄付に近い場合も多いのだけれど、購入プロセスにより自動的に「権利」という投資に近い心理がうまれることではないかなと思います。それにより、もしかしたら寄付してほしい団体がやろうと思ってもなかなかできない「支援を自分ごとにしてもらう」ことが可能になっているとも考えられる。

ゲーム性による「巻き込み」感

もうひとつ「ゲーム性」と書きましたが、これは「権利」より明らかな特徴ですね。というか、グルーポン等のフラッシュ・マーケティングと仕組みは一緒ですから、むしろ全面に出ていて今更言うことでもないのかもしれません。今更言うことではないかもしれないけれど、寄付、支援の分野でゲーム性を適用するものは今までほとんどなかったわけですからちょっと説明してみます。

まず、ゲームとは何か?

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ゲームストーミング――会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム」にはこのように書いています。

■ゲームの構成要素

  • ゲーム空間:日常的なルールが一時的に無効になる空間
  • 境界(時間的/空間的):ゲーム空間と日常的空間の境界、プレイヤーがゲームに参加している時としていない時の境界
  • ルール:ゲーム空間内だけで通用するルール
  • 道具:ゲームに関する情報を保持する物体
  • ゴール:ゲームの終了を決める条件

■ゲームの世界の展開

  • 世界の想像:
  • 世界の構築:
  • 世界の開幕:
  • 世界の探索:
  • 世界の閉幕:

※詳細は文末※1を参照のこと
※最初の2段階はゲームの設計、残り3段階は実際のプレイ段階

1プロジェクトごとに与えられる同じフォーマットのプロジェクト・ページ、「期間内に目標達成しなかったら、今まで調達したお金もすべて没収」というそこだけで通用するルール、見返りという道具、期間や目標金額というゴールの設定。それらに同意したものだけがプレイヤーとなり、「世界の初期状態」と「望ましい状態」のギャップを埋めようとするプロセス。設定したゴールが実現すると終了する世界

こうしてみると、さまざまなクラウド・ファンディング・サービスは資金調達というゲームを自由に立ち上げることができる「場」を提供していることが明らかだと思います。

私が、Kickstarter や LoudSauce をみている中で、ちょっと支援してみてもいいかも、と思ったのも、そもそもはこれらの「ゲーム性」に、「面白そう」「ちょっとやみってみたい」という感情を喚起されているというのがほんとのところなのかもしれません。で、実際ゲームって、だいたいやってみるとしょーもなくてもある程度は「はまる」中毒性をもっているものですから、上で書いた「権利」と同様、もろ”自分ごと”になるのです。

上で書いた比較の表の最後に、クラウド・ファンディングの達成時の気持ちを「ヤッター!」と書いたのは、まさにゲームをクリアした時に発する言葉です。
だから、広告が無事出稿されたら、こうやって写真撮ったりするわけです(笑)。

350.org

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Creative Commons License
This work is licensed under a Creative Commons Attribution-NonCommercial-ShareAlike 2.0 Generic License.

こうした、ゲームではないサービス等へのゲーム性の付加に関しては、今「ゲーミフィケーション」という単語がマーケティング分野でバズワードになっており、さまざまな WEBサービスやプロモーションで導入されているところです。その中でも、このエントリはとても丁寧にゲーミフィケーションに関して解説しています。

このエントリでは、3つのポイントのひとつとして「エンゲージメントループのデザイン」を紹介しています。

  • 進行状況の可視化:地位、課題、報奨、メッセージ
  • ポジティブな感情の喚起:楽しい、嬉しい、好奇心、悔しい
  • ソーシャル的な行動を促す:共有する、支援する、競争する
  • エンゲージメントを築く:タスク、ミッション、ゲーム、クイズ、ギフト

この4つがぐるぐると回ることで、「プレイヤー」を増やし動かしていくわけですが、これはまんまクラウド・ファンディング・サービスのシステムにも当てはまります。

  • 進行状況の可視化:目標と達成率、締切、支援状況等
  • ポジティブな感情の喚起:動画等での PR等
  • ソーシャル的な行動を促す:支援する、ソーシャル・メディアにシェアする、いいね!を押す等
  • エンゲージメントを築く:見返りの約束、プロジェクト・アップデートの報告、コメント等

このように見事に、人々が「巻き込まれていく」ループを取り込んだサービスになっているのです。

ここでちょっとアート・マネジメント的なことを書きます。
2年間大学院でアート・マネジメントの世界をほんの少しだけ齧らせてもらった中で感じたことは、芸術関連のマネージャーにとって、自分たちの団体がやっていることに対し人々に関心をもってもらうこと、親しんでもらうこと、さらには支援してもらうこと、そこに至るまでの「味方」を一人でも増やすことは大きな課題だということでした。そして、そのためにいかに人々を「巻き込む」こんでいくか、そこに対し知恵を絞り、さまざまな努力をしています。

巻き込むことが課題であるならば、こういったゲーム性を取り込んだ資金調達方法は、これからもっと活用していい、するべきな方法なのではないのでしょうか。現在少しずつ美術館等でも「ゲーミフィケーション」を取り入れている事例は出てきていますが、資金調達にはまだほとんど応用されていません(厳密にいうとびっくりするほど軽い事例をひとつ知っています。機会があったら触れるかもしれません)。クラウド・ファンディングというと、アート/エンタメ関連でも団体というより個人が活用するものと捉えられがちなところもあり、それもたしかにそう大きく括れるところもあるのですが、別に Kickstarter を使う必要はないけど、こういった「ゲーム性」を寄付、資金調達に積極的に取り入れていくのはありなんじゃないかなあー、と改めて強く感じました。

以上、テーマが大きいわりに駆け足になってしまいましたが、今回は、クラウド・ファンディングの基本的な特徴としての「ゲーム性」と「権利」のことをかいてみましたっ。
ここは、クラウド・ファンディングの今後やそこで生まれている心理を考える際の土台だったりするので、また何度も書くかなと思います。

ていうか、私、10年間ゲーム業界、しかも中盤~後半はオンライン・ゲーム業界にいましたので!!このあたりはまさに元・専門として頑張らなあかんところですわ!

さて、今日は金曜なので、明日明後日は更新オヤスミーです。

一応8月いっぱいは平日毎日書くぜプロジェクトもあと3回となりました。さてさてどうしようか! 意外とやればできるし、飲んだくれているよりブログ書いてた方がなんとなく自分のためにはなってる気がしているので(笑)
あともしかしたら、更新時間を22時からサイクル的に朝にかえようかなーとかも思っておりますが、それも含めて週末ちょっと考えようっとー。

※1:ゲームの世界の展開 詳細(下線は筆者)

  • 世界の想像:
    ゲームを始めるにあたって、実現可能な世界を想像しなくてはなりません。この世界は、プレイヤーたちがさまざまなアイディアや可能性を探索することのできる一時的な空間です。
  • 世界の構築:
    ゲームの世界は境界、ルール、道具があって成り立ちます。境界はゲームの世界を空間的、時間的に区切るもののことで、外部との空間的な境や始まりと終わりを指します。ルールは世界を支配する法、道具は世界の内部にあるいろいろな物体です。
  • 世界の開幕:
    ゲームの世界には、プレイヤーの間で同意が得られて初めて入れます。同意するにはゲームの境界、ルール、道具を理解し、それが何を表し、どう機能するかなどがわかっていなければなりません。
  • 世界の探索:
    ゴールは人を探索へと駆り立てる原動力で、世界の初期状態と、ある望ましい状態との間に必要な緊張をもたらします。ゴールは前もって定めることも、プレイヤーがゲームの経過に従って定めることもできます。プレイヤーは一度ゲームの世界へ入ったら、その世界の制約のもとでゴールを実現しようと努めます。プレイヤーはゴールに到達しようと、道具との間に何らかの関係をもち、アイディアやさまざまな戦略を試し、ゲームの進行とともに変化する状況に適応します。
  • 世界の閉幕:
    ゲームのゴールが実現するとゲームは終わります。ゴールに到達すればプレイヤーは満足感と達成感が得られますが、ゴールはゲームの真の目的というよりは、むしろ儀式的にゲーム空間を閉じるための目印のようなものです。ゲームの主眼はプレイそのもの、プレイの間に行われる想像上の空間の探索、その探索から得られる洞察です。
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