【今までのまとめ】クラウド・ファンディングは何が新しいのか

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いよいよ8月も最終日です。
今月、主にクリエイター/アーティスト支援としてのクラウド・ファンディングについて、長々といくつもエントリを書いてきました。
今回は、それらをざっとまとめつつ、目次がわりに各エントリへのリンクをはっておこうと思います。

クリエイター支援クラウド・ファンディング・サービスの現状

まず、クラウド・ファンディング=WEB による少額多数による資金調達、とはなんぞや、という話。

そして、この仕組みが、今どのくらい実績を出しているのか、ということで、クリエイター/アーティスト支援のクラウド・ファンディング・サービスとしては現在一番有名であろう Kickstarter(以下、KS)の2年間(2009年4月ロウンチ時~2011年3月)のデータを紹介しました。

公式データによると、2年間で約2万プロジェクトに約5,310万ドルが集まり、そのうち85%が調達成功したとのこと。1ドルでも支援したことがあるアカウント数は60万。個人的にはそのうち、8万アカウントが複数回(人によっては何十も何百も)の支援を経験していることにとても関心を持ちました。

なんでかっていったら、こういうサイトで支援するのって、まず考えられるのはプロジェクト立案者=支援してくれーって頼むクリエイター/アーティスト側の友人、知人、血縁関係だと思うんです。で、2年の間に KS を使って支援を募るクリエイター/アーティストが知り合いに何人もいる、って人はまだそれほど数がいるわけではないと思う。つまり、複数回している人は「見ず知らずの他人」に WEB を通じて支援をしているのではないか。

もちろん、「複数の知り合い(もしくは一人の知り合いが複数回)が 2 年の間に KS でプロジェクトを立ち上げて、そのたびに支援した」という人もいるでしょうが、その分をさしひいても、複数支援アカウント 8万のうち 6 万、つまり全支援アカウント60万のうちの 10% ぐらいは「赤の他人のプロジェクトを支援する層」がいると考えられます。

それって、けっこうすごくないか? と私は思います。この「!」への関心は、その後も続きます

じーーーーーーーーーー

じーーーーーーーーーー

さて、KS の傾向の話に戻りまして、具体的にどんな分野のどんなプロジェクトが多く立ち上がっているのかにも触れました。

現在支援総額でいうと、映像、音楽がダントツに強いようにみえます。でもこれは、同じぐらい立ち上がるプロジェクト数も他分野に比べて多いということであり、映像や音楽が資金を集めやすいというわけではけしてない。むしろ、過去2年で一番多額の資金を調達したプロジェクトベスト10(上記エントリ参照/1位はなんと約95万ドル!)をみると、「デザイン」カテゴリが半分を占めていることがわかる。トップ10に入っているデザインカテゴリのプロジェクトの資金調達額合計(約215万ドル)は、デザインカテゴリ全体の資金調達額(約360万ドル)の60% であることからも、この分野が「大当たり」する可能性が高いことがわかります。

そう、たしかに、KS で多額の資金調達をしやすいプロジェクトというのはあります。
KS でのプロジェクトは大きく分けて下記2つに分類される。(Garrett 氏のブログエントリ参照)

  • プレ・オーダー・モデル(ウェブショップとしての KS)
  • 利他主義(altruism)モデル(募金箱としての KS)

「プレ・オーダー・モデル」は、たとえば iPhone の周辺グッズでアイディアやデザインに優れているものを考案し、「これ作るから制作費出してちょーだい! できたらあげる etc. するから!」というもの。

それが欲しいからお金を出すわけで、「支援」というのともちょっと違う。限定モデルが欲しい、とかそういう感情に近い。なので、「欲しい!」と思う人が多ければ、調達目標額関係なくどんどんどんどんお金が集まる。デザインカテゴリで多額を得たプロジェクトが多いのは、こういった種類のプロジェクトが多いからだと思います。そういった意味では、プロジェクト”支援”者側は「支援」ではなく「購入」という感覚でお金を出していることが大きな特徴といえます。
この話はこの後ずっと続きます。

対して、後者「利他主義モデル」と書いたものは、もっとクリエイター/アーティストよりというか、「こういった作品を作りたいから支援してけれ」というスタイルになるので、仮に”共感”を得て順調にお金を出す人があらわれたとしても、調達目標額を超えた時点で「このプロジェクトはもう大丈夫ね」ということになり、目標以上の資金を調達しづらいわけです。

今までの資金調達の場が WEB にうつっただけではない

これだけだったら、別に(私としては)面白いサイトではありませぬ(笑)。

いわゆる「自分の作りたいものを作りたい」=上でいう利他主義モデル、なクリエイターやアーティストでも、目標を大幅に超える調達をした事例はたくさんあります。以下、2つのエントリでそんなクリエイター/アーティストを 3 組を紹介しました。

これらの事例を含めていろいろデータをみていくと、面白いことがわかりました。

ギルマン・バラックス(シンガポール)にて

ギルマン・バラックス(シンガポール)にて

彼らを含めた、目標金額を大幅に超えた「大成功」なプロジェクト(仮にここでは目標比 150% 以上調達に成功したものとしてみました)と、目標金額をかろうじて超えた「小成功」プロジェクト(目標比 150% 未満)、あとは目標に届かなかった「失敗」プロジェクトを比べると、以下のような結果が出たのです。

  • 全支援額中の「見返り購入」率:「大成功」>「小成功」>「失敗」
  • 全支援者中の「複数支援経験者」率:「大成功」>「小成功」>「失敗」
  • 1支援者ごとの支援額:「小成功」>「大成功」>「失敗」

※その他のデータや数字の詳細は、こちらのエントリをご参照くさい。

「見返り購入」率について補足しておくと、KS は支援をする際にクリエイター/アーティスト側が設定した「見返り(ある額支援してくれたら○○をあげますよ、というもの。だいたい作ったもののコピーやプレミア・モデル、もしくはレセプション等へのインビテーション等)」を購入するか、それはいらないから純粋に寄付するかを選択することができます。つまり、見返りを購入している率が高いほど、純粋な支援ではなく、なんらかを「購入」することを選択している、つまり「見返り」になんらかの価値をおいている人が多いということなります。

これらのデータを見ていると、いろいろと想像が膨らみます。

たとえば。

大成功したプロジェクトには、日頃から KS で赤の他人のプロジェクトをチェックしていて、「見返り」になんらかの価値を見いだすのであれば少額で「購入」する、そんな層が多くついているのではないか……なんていう妄想もできますよね。それは、「1支援者ごとの支援額」が、なぜか「大成功」より「小成功」の方が大きいことにも暗にあらわれているのではないでしょうか?つまり、より多くの(おそらく)見ず知らずの少額しか払わないような他人を巻き込めたプロジェクトの方が、結果大きな成功をおさめているのです。(さらにデータをみていくと、多額の支援をぽんとする人がいる割合も「大成功」の方が「小成功」よりやはり多いことがわかります。それでもなお、支援額平均が下がるというのは、少額支援に大人数が集まっているということになると思います)

ここで、従来の資金調達や寄付のパターンを思い起こしてみるに、こちらは、長い関係を築いた「少人数」の人たちから一人当たり「多額」の支援をしてもらうことが成功のセオリーと考えられていたのではないかと思います。クラウド・ファンディング・サービスはその逆、「少額」を「大人数」の方が大成功するパターンが多いのかも、というデータが出ていることになります。

そう考えると、クラウド・ファンディング・サービスとは、すっごい乱暴にいうと、

少額×大人数>多額×少人数

であり、従来の資金調達のやり方を WEB にのっけただけではない新しさがあるのではないか。ここが、クラウド・ファンディング・サービスの面白さだと私は思います。

なぜ、人はクラウド・ファンディング・サービスで支援をするのか

そんなことに気づいていくにつれ、クラウド・ファンディング・サービス成功の肝はいかに「支援という名の気軽な購入をするコミュニティ」を作っていくかだと確信していきました。プロジェクトを立ち上げる側がいかにクラウド・ファンディングで資金調達に成功するか、という視点のエントリや文章は海外のものを探せばいっぱいあるのですが、まだそのコミュニティを作る途中である日本においては、まずはクリエイター側のノウハウではなく支援者コミュニティ側形成の研究であろう。

と考えた私は、
なぜ、人はクラウド・ファンディング・サービスで支援をするのか」という深遠な話題(w)のヒントをつかむべく、従来の寄付と比べる形でいくつかエントリを書いています。

権利感覚、運動が起こる際のメカニズム、なぜ人はゲームに夢中になるのかーー

出てきたキーワードはいろいろあれども、いろいろまとめると「ゲーム性」というところに集約されていくのかなー、というのが今の感覚です。そして、それが、従来の寄付や支援とまったく違ったメカニズムであることも。

ゲーム性、というと、どういったタイミングで報奨を与えるか、人と競わせるか、、などといったテクニックの話を想像しがちだけど、そういう種類のものではなく、もっとベーシックな人の心理につながること。ひとつキーワードをあげるとすれば、このエントリで紹介したゲーム・デザイナーであり研究者ジェーン・マクゴニガルさんの「人はエピック・ウィン(壮大な勝利)を感じられるからゲームに夢中になる」という話でしょうか。

エピック・ウィン――際立ってよい結果。
それが達成するまで自分にそのようなことができるなんて思えないほど、
実際達成したら、自分の可能性に衝撃を受けるほどの。
自分の1アクション、1アクションが自分の存在に意味を与えるような物語。

空!!!!

空!!!!

この話を適用してみるのであれば、クラウド・ファンディング・サービスで支援する人々は、見返りの購入という行為を通じて「エピック・ウィン」を求めるたびの参加権を得ているのかもしれない。
多少”叙情”的ではありますが、こんな仮説も、直前のエントリでは書いてみました。

ここのあたりはこれからどういう道筋、どういった言葉で語っていくことになるか、自分でもよくわからないのですが、私のそもそもの原体験のような関心ともいろいろとつながってきそうな予感がするのでじっくり考えていきたいと思います。

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というわけで、なんか知らんが、いろいろなきっかけではまってしまったクラウド・ファンディング・サービス探求(笑)ですので、これからもしばらく飽きるまで書いて見ようと思います。

KS のようなクリエイター/アーティスト支援以外でも、さまざまな分野、特に社会貢献活動分野は相性がよくって、いっっっっぱいサービスがあるので、そちらの調査もしてみたいですし

※たとえばこんなの↓
「世の中を変える広告」を皆で出稿しよう――LoudSauce.com

他、エドワード・ノートン等のセレブリティがどーんと投資してやってるサービスなんかもあるのですよねえ

こうした仕組みでクリエイター/アーティストが資金調達できる時代になってきた時、単純に一回の制作費を調達するという考えでいてはあまりにももったいないので、そのあたりの可能性やサバイバル能力として必要なことも書いていければと思う。このあたりは、もうちょっとあとのタイミングかなー?

※実際に事業のためのシード・マネーという視点で KS で資金調達を行った人の事例を紹介エントリはこちら

もちろん、それ以外のネタ、、、アートとソーシャル・メディア的な話も引き続き書いていきたいでございます。

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