アーティストへの投げ銭システムは成功するか?――”Art Micro-Patronage” の場合

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今日はまず、今年10月から始まるアーティストへの少額支援の新しいプラットフォームを見つけたので、そちらの紹介から。

展覧会を観ながら作品に「投げ銭」

その名も

Art Micro-Patronage

Art Micro-Patronage

サンフランシスコ発のサービスで、10月1日にロウンチとのこと。

どんなサービスかというと、基本的には月1回、WEB 上で現代アーティストの作品による「展覧会」が実施されます。オンラインの展覧会がどうデザインされるかは始まっていないのでまだ不明ですが、ジャンル的には、WEB での表現を活かしているメディアアート系が中心の模様。

1つの展覧会につき 7~15 名のアーティストがピックアップされるようですが、このサイトで特徴的なことは、展覧会をみている最中に少額寄付(50セント、1ドル、5ドル)をすることができることです。こちらもどうデザインされるのかは不明ですが、”Faebook のいいね!ボタンを押すようにということなので、各作品の横にボタンでもついているのかもしれない。つまり、「投げ銭システム」ですね。

「投げ銭システム」とは、「いい!」と思った WEB 上のコンテンツ等にその場で金銭を送る仕組み※1で、例えば私も、UST でめっちゃいいライブが無料で観られた時とか感動して、「これちょっとお金払うよ! 投げ銭システム欲しい!」なんて思うこともあります。※1で引用しましたが、ネットが普及していった時から、というかコンテンツが有料であることが普通だった普及期だからこそトライされてきた結構古くからある考えですな。

で、このサービスでは「投げ銭」をした人(つまりパトロン)だけが、展覧会終了後もこの展覧会をみることができるそうな。(それ以外の人はリストと説明はあるが作品は閲覧できないみたい?)

ちなみに、展覧会ごとに「キュレーター」がいるのですが、キュレーター自身も公募されており、こちらには、展覧会終了時に $200 が報酬として支払われるようです。もう来月から来年 3 月までの 6 ヶ月分は決まっていて、ざっとプロフィールをみた限りではアシスタント・キュレーター職に就いている人やアーティストが中心ですね。

アーティストを運営側、キュレーター側どちらが選定していくのかその交渉はどちらが? 等細かいところはわかりませんが(ある程度運営側かなと思いますが)、どちらにせよこのサービスの特徴的にもおそらく新進アーティストの作品が中心になっていくのではないかなーと思います。

ちなみにこのサービスを立ち上げたのは、The Present Group のファウンダー 2 人。The Present Group では 2006 年から年間定額制のアート作品レンタルのサービスを行っているほか、アーティスト助成のための WEB ホスティング業務(!)など、アーティストをサポートする事業をいろいろと実施しているようです。今回のサービスもその一貫。

同じ「WEB を通じた少額支援」でも

実は……このサイト、ブログで書こうかちょっと悩みました。

というのも、いろいろと姿勢は真摯だと思うし、投げ銭システムも関心はあるのですが、ほんとーーに失礼を承知でいうと、なかなか成功するように思えなかったのといまいち面白みに欠けるかなーと感じてしまったのです。
で、基本的に「これ、ないよー」っていう発言はネット上ではあんまりしたくないと思っているので。。

でも、このサービスをみた時、同じ「(クリエイター/アーティストへの)少額支援」という言葉でくくられたりするけど、クラウド・ファンディングとはまったく違うんだなーというのはすぐに感じたので、投げ銭システムとクラウド・ファンディングの比較をしつつ、何故このサービスが「なぜ成功するように思えなくて」「面白みに欠ける」と思ったかを書いておきます。(ま、日本語ブログだしね、はは、、)

まず、ざくっと超独断的視点からですが、投げ銭とクラウド・ファンディングってこんなところが違うよねっていうのを挙げてみようと思います。

投げ銭システムとクラウド・ファンディングの比較
項目 投げ銭システム クラウド・ファンディング
動機 コンテンツに対して感動した、役に立ったこと等への御礼=この一瞬への感謝の表現 何かを成し遂げようとするチャレンジへの共感、好奇心=ゴール到達までのゲームに乗る
アクション 「したい」と思った時に1クリック(が望ましい(注1)) 実際に支援するまで、見返り等を読んで支援額決めるというアクションが入る
支援額 自分の気持ち次第 見返りと自分が出せる金額のバランスで決定
気分 ありがとう!! 成功するといいな!!

 ※決済の関係でそれがなかなか実現できないから、発達・浸透しないというのもあると思います。事前にある程度まとまった額のポイントを買っておいて投げ銭、とかってちょっとハードル高い。Paypal とかの仕組みはよくわかってないのですがどーなんだろ。

適当に書いてみましたが、どうでしょうか……

言いたいことは、投げ銭の基本は「心が動かしてくれた人」に対する「感謝」なんじゃないかということ。
また、ちょっと前に Radiohead が自分たちのアルバムを、好きな値段で DL してもらったり、もっと昔だとダウンタウンのまっちゃんが自分のライブの値段を好きに決めさせたように、「いくら出すかは完全に自分の裁量」というのも特徴。「投げ銭」っぽいイメージでいうと、この金くれてやらあ!的な粋な感じ(?)かなあ?笑

対して、クラウド・ファンディングの方は、何度もこのブログでエントリしているので詳しくは書かないですが、一番の違いを言うのであれば、投げ銭が「(まさに「投げる」時の)一瞬」のアクションであるのに対し、支援はあくまで”始まり”であり、「一定期間」のゲームへの参加という感覚になるのだと思います。ゲームだから、ルール(期限、ゴール、見返り等)もちゃんと確認する。

つまり、投げ銭が「うおおおおおおお」という感情の高まりの末のアクションだとすると、クラウド・ファンディングの方はもちろんファースト・インプレッションで「いい!」「面白い!」というのがなければ成立しないながらも、その後いろいろ「見返り吟味タイム(どっちを買おうかな、っていうショッピングと一緒ですね)」があるので、ちょっとクールなアクションになるのでしょう。

現代アートと投げ銭システムは合わない?

こうしてみると、今回紹介した AMP が「ちょっとしんどいかも」と感じてしまう理由がみえてくると思います。

まず、基本的に投げ銭って、ライブのような「そこで頑張っている人」が見えやすいものに向いている気がするんです。AMP がどのような作品を展示してくるかわからないですが、アーティストの姿がみえない「作品」自体に突発的に銭投げるまで感情を高まらせるというのは、結構ハードル高いのではないか。特に現代アートの面白さは、異論がある方もいると思いますが、歴史や文脈、時代や政治状況など、知的な部分を使うことも多いし。(もちろん、そうじゃないのもあると思うし、このプロジェクトでは映像作品とかインタラクティブな作品が多そうなので一概には言えませんが……)

あ、わかった、投げ銭って「拍手」「ブラボー」に近いのかも。拍手って人に対してしますよね。すっごいいい作品でも、作品自体の前であんまり拍手したりしない。(映画とかは別)

ロンドンで見かけたストリート・ミュージシャン

ロンドンで見かけたストリート・ミュージシャン

いやいや、現代アートだって心動かされたらその場で投げ銭するよ。うむ、その可能性もあるでしょう。(だから、そもそもこの企画が成立するわけだし)

だとすれば、投げ銭の価格を 50 セント、1ドル、5ドルにのみ設定していることが※2、圧倒的に損していますね。上にも書きましたが、投げ銭は 100% 「主観的な価値観」に負っているので、ものすごく支払える人がいてもおかしくないんです。だから、自由に金額設定させるべき。安価を設定して選択させるのは、やはり見返り購入の形をとるクラウド・ファンディングだからいい手法なのかなと思います。

そう、最初このサイトの説明を一通りみた時「うーん」と思ったのは、あまりにも支援額の設定が低すぎて、しかも大人数が支援するようなタイプのものでもないし、経済規模がどうしもすごく小さいだろうなあと。で、「それって果たしてアーティストのために、どうなんだろう」と思ったことなんだよなあ。キュレーターも公募でギャラがあるのは面白いですが、やっぱ $200 だし。。(こういう場合、払わないケースも多いでしょうから、良心的なんでしょうけどね)

っていって、私の読解違いで、自由に金額設定できたら話は違ってきますが。。(読解違いなんじゃないかと何度も読みなおしてしまったほど、この支援額設定はナイと思う。)

加えて、やっぱり投げ銭システム自体が大変だなあと思うのは、事前にチャージ不要で、支援したい時に気軽にボタン押したら自動的にアーティストにお金がいってるシステム(amazon の 1クリック購入レベルで)がなかなか構築できないこと。そして! とはいえ、とはいえ、とーはーいーえ、人は払わなくてもよいものにお金を払いづらいんだよなああということ……。※3(それって、投げ銭云々にかかわらず「支援」というものの根っこにある課題か(苦笑))

私も前職を通じて、WEB でお金を払ってもらうことの大変さのは身に染みているので、だからこそ、「投げ銭システムっていいよね!あったら使う!」という声とは裏腹に、実際導入してみたら(一部、そんなことしなくても稼げるミュージシャン等という例外を除いて)労多く使う人少ない、的なことを考えると、うーん、なんかこのサイトもすごく考えて作ったと思うけど、結果的にはどうなるかなあ、、と思ってしまったのでした。

だからこそ、(もちろんほいほい誰もが財布のひもを緩めるわけではないけど)「支援」とは違う心理が働いている気がするクラウド・ファンディングには可能性があるような気がしてしまうということもあり。
あ、射幸性の高い投げ銭システム(なにそれw)とか出来るんであれば、可能性あるかもしれない!!(笑)

とまあ、いろいろ書きましたが、AMP、フタを開いてみたら全然違うサービスで、私の予想などまったく見当はずれ、意外とイケるかもしれません。どっちにせよ、どんなインターフェイスにするのかなー、どんな展覧会なのかなーというのは気になるので、10月にスタートしたらまたアクセスしてみようと思います。面白そうだったら、またエントリしますね。

※1:古いサイトですが、このようなものもありました。

※2:サイトには書いていないですが、詳細の情報をメールでもらったらそのように書いてありました。

※3:個人にお金を支払わせない、つまり企業なりなんなりがスポンサーになって「1クリックするだけで◯円寄付されます」形式をとって、それがかつスポンサー側の意図にあうモデルを考えるという手もあるのでしょうが、それはまた別の話として。。

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