音楽/映像分野でのクラウド・ファンディング変遷[インフォグラフィックス有り]

うははー、タイトルに「インフォグラフィックス有り」って一度やってみたかったのですよね~(笑)なんとなく流行りっぽくて(笑)
といっても、紹介するのは最後です。しかも別に私が作ったやつではありません。ごめんなさい

もとい。
前回は、クラウド・ファンディングに至るまでの、マイクロ・ファイナンスからの流れをざっと見てみましたが。

マイクロ・ファイナンスからクラウド・ファンディングまでの変遷

チャリティの分野では、インターネット以前から長くあった概念であること、
一言で「みんなからお金を集める」といっても、支援からビジネスまで、寄付、融資、投資といろんなスタイルが、ここ数年ネット上で立ち上がっておるなあと。

今回は、クリエイティブ分野に特化して、クラウド・ファンディングのマイル・ストーンとなる事例を2つ 3 つみていこうかなっと思います。

Google 以前のネットで巻き起こったムーブメント

音楽分野で、クラウド・ファンディングを活用して成功例を出した草分けは、Marillion というイギリスのプログレッシブ・ロック・バンドと言われています。
82 年にメジャー・デビューしたバンドで商業的にも一定の評価も受けたようですが、時代的にはもうプログレッシブ・ロックは下火。90 年代後半には、メジャー・レーベルとの契約も切れ、苦境に立たされたようです。
そして 97 年、ツアーを開始したものの、アメリカへは行けない……という事態になった。

その時に立ち上がったのが、アメリカにいる彼らのファンでした。
アメリカでのツアーを実現するために、インターネットを通じて 6 万ドルを集めたのです。

praying audience [the go! team]
praying audience [the go! team] / f_mafra
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。
インターネット業界において 97 年がどういう時代だったかというと、94 年に Yahoo!、amazon、ebay が登場したばかり、なんとまだ Google は誕生していない(Google が始まったのは 98 年)、そんな時代ですよ、奥さん!

ネットでの検索と情報受信というスタイルがようやく広まりつつある時代にあって、ようやったなと今の感覚では思いますが、逆に言えば、前回のエントリで書いたように、チャリティ分野では昔からあった「少額を多数から集める」手法がインターネットにはすごく親和性が高く、すぐに適用されたと言えるかもしれません。

ちなみに、これはバンド側が始めたわけではなく、ファンたちによる自然発生的なムーブメントですが、
これで味をしめた? Marillion は、その後メジャー・レーベルと再契約した後も 2001 年、2004 年、2008 年リリースのアルバムをクラウド・ファンディングで資金を集めて作り、今も活動を続けているようです。

本格化するのは 2000 年代中盤から

とはいえ、やはりクリエイティブ分野含め広くクラウド・ファンディングに注目が集まるのは、21 世紀以降。
前回取り上げた開発途上国支援のためのクラウド・ファンディング・プラットフォーム Kiva が出来たのが 2005 年、ソーシャル・レンディングは 2006 年からですね。

映像分野のクラウド・ファンディング事例としては、2004 年のフランスのドキュメンタリー『Demain la Veille (Waiting for Yesterday)』がはしりのようです。これは、もちろん「ファンから自然発生」ではなく、フランス人起業家とプロデューサーがネットで支援を呼びかけ、制作資金として 5 万ドルを獲得しました。

そして、『Demain la Veille (Waiting for Yesterday)』の半年後には、Spanner Films が気候変動を扱ったドキュメンタリー『The age of stupid』の制作資金をクラウド・ファンディングで集めるプロジェクトを開始します。

これは、支払った額によって見返りを決めるという KS 等でおなじみのスタイルに限りなく近い形として提案されました。
4,999 ポンドまでが「寄付」でクレジットなどが約束され、5,000 ポンド以上になると「投資」として扱われ、額に応じて利益からのリターンがあります。

※Spanner Films 公式 “The age of stupid” HOW TO CROWD FUND YOUR FILM より

このプロジェクトは、2009 年公開までの 5 年間続き、合計 90 万ポンド!集めたそうです。
制作費、宣伝費はここからまかなわれ、リリース後 10 年間、スタッフ(制作時はかなり低賃金だった模様)と投資者は年に 1 度配当をもらうことになっています。

これは、大成功の部類に入ると思います。
現に、エグゼクティブ・プロデューサーであった Emily James は次回作もクラウド・ファンディングで資金調達をしています。

ちなみに、これらのプロジェクトが始まった 2004 年と言えば Wikipedia(2001 年)、ブログ(2002 年頃)を経て、Facebook が始まった年。(日本では mixi や gree がスタートしました)
後に大ブームとなった “Web 2.0″ という概念が提唱された年でもあります。翌 2005 年には youtube も始まりました。(てか、そこまで youtube がなかったなんて……今となってはほんと信じられないすね)
それまでの「検索/受信」中心のネットから「発信/共有」に切り替わったターニング・ポイントの時期だといえるでしょう。
少し横道にそれますが、このような大掛かりな「資金調達」ではなく、もう少しカジュアルに、個人が「気に入ったら、少しお金払って」と Web で募る動き=以前もエントリした(※1)マイクロ・パトロネージ(投げ銭)にトライする人が増えてきたのもこの時期。

欧米圏では Jason Kottle という 1 デザイナーが、会社を辞め、「フルタイム・ブロガー」としてやっていくために読者からお金を集め始めたのが、マイクロ・パトロネージの先駆けとされているようです。

いろんな人から少しずつお金を集める概念自体は、前エントリでも触れたようにチャリティの分野ではすごく昔むかしからのものだけれど、ネット環境やオンライン上での安全で手軽なお金のやりとりが整備されてきたため、ぐぐっと適用範囲を広めた、それが 2005 年前後だったということでしょう。

そして、「プラットフォーム・フェイズ 2」へ?

さて、このような流れを経て、クリエイティブ系のクラウド・ファンディングのプラットフォームが本格的に登場するのが 2008 年頃です。

  • 情熱的なファンが自然発生的に始めた動きがやがて大きな渦となった資金集め”ムーブメント”
  • 長期間をかけ、寄付と投資をうまく組み合わせて行われた調達活動
  • はたまた、個人が仕掛ける、ちゃりんちゃりんと小銭を入れるネット上募金箱

今までみてきた、このようなクラウド・ファンディングを、一段次のフェーズに移らせたのがこのプラットフォーム化であり、私はそこが可能にしたものがすごく重要で面白いと思います。
んー資金を調達したいプラットフォーム自体はもう少し前からあるので(たとえばクリエイティブ系ではないけど 2001 年からの JustGiving など)、プラットフォームのフェーズ 2 といったところでしょうか…

まず、プラットフォーム化したことで、決済などのハードルがなくなり、クラウド・ファンディングに挑戦できる人、団体の数が飛躍的に増えたことはたしかでしょう。(※2)
ここまでは「フェーズ 1」のプラットフォーム。

私が思う「フェーズ 2」の特徴をざっくり言うと、今 KS がとっている「(見返りとしてのモノやサービスを)購入型」「期間限定/0 円か、全部もらえるか=フラッシュ・マーケティング型」のプラットフォームということ。
※そういや、フラッシュ・マーケティングの代名詞グルーポン(この会社と、フラッシュ・マーケティング自体には、最近、かなりミソがついていますが。。)グがスタートしたのは 2008 年ですね。

このあたりのエントリでさんざん書いていますが、

「少額×大人数」が「多額×少人数」に勝つ資金調達コミュニティ
クラウド・ファンディングと今までの支援の決定的な違い
「こちら側」が見えないと人は動かない―クラウド・ファンディングと今までの支援の決定的な違い(2)
Kickstarter は「支援」ではなく「旅」のプラットフォームである

少々誤解をうむことを承知で乱暴に言って見れば、それまでその人やプロジェクトに特に思い入れがない人たち(アメリカの Marillion のファンと違って!)も、結果的には支援している、というのが、「プラットフォーム フェーズ 2」の面白さだと思います。
そのキーワードとなるかな、と今のところ思っているのは、「ゲーム化」とか「権利」という言葉。

board game night
board game night / gcfairch
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 – 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。
やっぱり、個別でプロジェクト・サイト立ち上げて集めるのでも、決済システムとしてのプラットフォームでもだめなんだよなああ。あ、全然だめじゃなくてすばらしいんですけど(笑)、従来の支援以上の広がりがなくて、私としては面白さや可能性が低いんじゃないかなって思うんです。

うむ。
私、これまであいまいにいっしょくたにしてたけど、今こうやって書きながら、改めて自分が「クラウド・ファンディング」そのものというよりも、クラウド・ファンディングの「KS 型のプラットフォーム」、それが生み出す人々の行動に関心があるのだというのがはっきりわかりました(笑)

なんて、書きながら「そうか」と自分で気づいて、それを書いて、という状態なので、話がそれて&まとまってない文章でごめんなさい(汗)

や、や、今回書きたかったことは、クリエイティブ分野でもネット普及期前から、クラウド・ファンディングへ至らせる需要はあったよ、、ということでした。
それが、システムが整ってきたことで、実施する人、プロジェクト数も、支援する人も、動くお金も、ここ 2-3 年で急激に増えてきているということ。

フェイズ2 云々という話は、これからも相当書いていく(&今までも触れている)と思うので、今回はこのあたりで。

最後に、今日書いたような事例も掲載されているクラウド・ファンディング関連のインフォグラフィックがあるので、それを紹介しておきます。
「KICKSTARTER : The science of crowdfunding」というもので、KS の仕組みや実績とともにクラウド・ファンディングの簡単な歴史がのっています。
Kickstarter に毎月 110 万人が訪問していること、年代ごとには 35 歳~44 歳の層が一番多いこと、、などのデータもありますね。
画像がすごく大きいので、こちらのリンクをみてみてください。

KICKSTARTER : The science of crowdfunding

さてさて、次回はなにかこかな。クラウド・ファンディング関連も、芸術団体とソーシャル・メディア関連もまだまだいろいろネタはあるので、少し考えます!

※次回更新……9.30(金)はちょっと難しそうなので一回お休み、10.3 (月)8時にアップしまーす!!

※[10.2(日)追記]
うーん、明日更新予定だったけど、ちょっと今週いっぱい更新が難しくなってきた……
というわけで、一週間ブログお休みします。10日の月曜は祝日なので、10.11(火曜)から復活ということで。
(あ、一応、このブログ月・水・金8時更新を目指しています。。)

先月先々月も第一週書けなかったし、三週間更新して、一週間は休むとかがいいサイクルなのかもしれないなあ。 ほよよ~

(※1)
アーティストへの投げ銭システムは成功するか?――”Art Micro-Patronage” の場合 

(※2)
本文中にも書いたとおり、”The age of stupid” のエグゼクティブ・プロデューサー、Emily James は次回作の資金調達のためのクラウド・ファンディングも、手数料をとられるのが嫌で(その気持ちもすごいわかる笑)自前で行っていますが、「自分たちでやるのは、想像以上に大変」と言っています。

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