昨日の続きです。
前エントリでは、
ミュージアムの WEB コミュニケーション・スタイルを探るひとつのヒントとして、SNS 等での影響力を測るツール「Klout」で、国内外の主なミュージアム 85 館の「Klout スコア」および、オンライン上での行動のパターンである「Klout スタイル」を調べてみました。。
■あのミュージアムのスコアはいくつ?――Klout からみる WEB コミュニケーション・スタイル(1)
調べたミュージアムのスコアとスタイル詳細と、スコアごとの傾向を書くだけで前回は時間切れになってしまいましたが、
今エントリでは、それらの情報を、簡単にマトリクスに当てはめてみた図を紹介するところから始めます。
一番多いのは「Specialist」スタイル
ミュージアム 85 館のスコアとスタイル他の関連を、前エントリで紹介した Klout スタイルのマトリクスにあてはめたのが下記の図です。

見方を説明します。
まず、縦 4 マス×横 4 マス=16の Klout スタイルに分かれていますが、各スタイルの左上に大きく書いてある数字が、このスタイルにあてはまるミュージアムの Klout スコア平均です。
その横にあるのが、館の数。
下の「Follower」の左にある数字が、同じくこのスタイルにあてはまるミュージアムの Twitter フォロワー平均の概数で、
「/ 日」の横にあるのが、一日の平均 Twitter つぶやき数です。
Klout は、Twitter 以外の SNS もみていますが、一番データが手っ取り早くわかるのが Twitter だったので参考までに載せておきました。
これをみると、まず、ボリューム・ゾーンが青枠で囲った右下、「特化した話題を創造する」スタイルである「Specialist」と「Networker」にあることがわかります。
この 2 つのスタイルの概要はこんな感じ。
■Specialist
- 専門分野の中での発言力がある
- 発信する情報は特定のトピックや業界に集中している
■Networker
- 誰とネットワークを構築していくか、そして、自分の「オーディエンス」に共有すべき重要な情報は何かを知っている
- フォロワーのために自分の持ちえるネットワークを提供する
より話題のフォーカス度が高い Specialist の方が、スコア平均が高くなってますね。
日本のミュージアムの中でも、スコアの高い森美術館やワタリウム美術館等多くのミュージアムが Specialist 枠に入っています。
まあ、ミュージアムにはアートという専門分野に関して自らが発信源となる情報が多くあり、それらをまずは関心のある人たちに提供していくことになるので、「Specialist」スタイルになるのは当然かもしれません。
が、実は、これはミュージアムに限らず、WEB サービスを比較的よく活用・利用している多くの人・団体のアカウントがここに当てはまるようです。
詳しくは英語を読んで欲しいのですが、ざっくりと説明をすると、普通に使われている一般的なtwitterアカウントは、たいてい右下の方に分類されます。そして、あんまり使っていないアカウントや、死んでるアカウントは左下のほうです。ほとんどのアカウントはこの下半分に収まると思います。内輪でめちゃくちゃ使っている人とか、特定の情報をガンガン流しまくっている人は、右下の「Specialist」に分類されていることが多いです。
――klout指数の全容(Twitterをはじめとするソーシャルメディアにおける影響力の指標)より
つまり、まじめにツイッターを利用する意思とリソースのあるミュージアムは、まずここに該当していくことが想定されます。
そして、引用にも書いてあるとおり、まだ WEB でのコミュニケーションに慣れていないアカウントは、左下の第四象限にあるスタイルに配置されていくんですね。今回はそれほど多くはありませんでした。
ちなみに、仮にここに分類されてしまっても、これからいくらでもスタイルもスコアも変えていけるので、大丈夫です。なにせ、ルーヴルやオルセー、ウフッツィなど、まだ Twitter を始めていないミュージアムもありますから!!
「頑張って広報している」から頭ひとつ抜けたミュージアム・アカウント 3 つのタイプ
さて、まずは
「これから WEB でのコミュニケーションをとっていくぞ、まずは展覧会やイベントの広報やそれに付随する情報を発信していくか」と、ある程度定期的に twitter や Facebook 等の更新をまじめに始めたミュージアム・アカウントは、「Specialist」「Networker」に分類されていくらしい、というのが見えてきました。
実際、このスタイルに到達するまでアカウントを育てていくのも大変だと思うので、まずはここにきっちり入るよう、コンスタントに自分たちの情報を流していき、関心をもってくれる人たちときちんとコミュニケーションをとっていくこと目標にしてよいと思います。
でも、ミュージアム・アカウントが「ファンの人のための情報発信」を超え、マトリクスの下半分ではなく、上半分になる――さらに影響力を高めていくことも可能であること、そしてその場合のいくつかの方向性を、最初に示した図は表わしています。
(…)上半分はというと、左上の方は情報拡散を行い、それをRTされることが多い人が分類されます。そして右上の方は、その拡散される情報自体を自ら作り出しているような人が分類されます。アーティストとか、芸能人でも有名所とかは右上の「Celebrity」に分類され、有名な経営者とかは「Thought Leader」に分類されていることが多いというのが、僕が今まで見てきた中で感じることです。
――klout指数の全容(Twitterをはじめとするソーシャルメディアにおける影響力の指標)より
では、左下のボリュームゾーンから飛び出して、さらに影響力をもったミュージアム・アカウントはどういったスタイルへ進んでいるか。
大きく分けて、「Thought Leader」「Pundit」「Broadcaster」の 3 種類に分かれていきます。

「Thought Leader」と「Pundit」は「幅広い話題を創造する」スタイルの第一象限、
「Broadcaster」は、「幅広い話題を集め拡げる」スタイルの第二象限ですね。
その中でも、Pundit は平均スコアもずば抜けて高く、ミュージアム・アカウントが持ちえる影響力としては最高峰のスタイルなのかもしれません。
(逆にいえば、やっぱり、「影響力最大」である Celeblity にはミュージアムはなれないのかなあー。)
■Pundit
- ニュースを共有するだけでなくニュースを作り出す人
- 発信した意見は広く広まり、信頼性が高い
- 業界内のリーダーとして認識されている
ちなみに、ここに該当するミュージアムは下記の 5 館です。
- アムステルダム市立美術館
- アンディ・ウォーホル美術館
- ソロモン・R・グッゲンハイム美術館
- テート
- ニューヨーク近代美術館(MoMA)
グッゲンハイム、テート、MoMA あたりはもう別格でしょう、というのと、フォロワー36万いるアンディ・ウォーホル美もちょっと手が届かないかな、、という感じだけど(これはこれで、一人のアーティストのミュージアムがこれだけ影響力があるっていうのも興味をそそりますが)、面白いのはアムステルダム市立美術館。
ツイッターのフォロワーだけでいうと、現時点で 1 万弱で、スコアも 51 とごくごく平均的なところです。日本のミュージアムで同程度~1万以上のフォロワーを持つところはいくつかあります。それほど、NY やロンドンに比べたら観光客の数もかなり少ないでしょう。
なんでアムステルダム市立美術館が、Pundit なのか…?というのは宿題その1にしたいですが、データをみた限りでは
- ツイート数が平均より多い(4.4/日)
- 英語で発信している
というところにもしかしたらヒントがあるのかも、と思ってます。
さて、Pundit に次いでスコアが高いのが「Broadcaster」。
■Broadcaster
- すばらしいコンテンツを勢いよく広める人
- 業界内の基本的な情報源である
- 多くの多様な人たちが、発信するコンテンツに価値をおいている
このスタイルには
- 自然史博物館
- ホイットニー美術館
- ポール・ゲッティ美術館
- ポンピドゥー・センター
の 4 館が該当。
どれももちろん世界的にに超有名なミュージアムであり、情報の拡大を得意とするスタイルなだけあって、フォロワーもすべて、万、十万単位ですね。つぶやく頻度も他と比べて多い。
ここで注目したいののはポンピドゥ・センター。
フォロワー数は 2万以上ありますが、実は日本の森美術館もこのぐらいのフォロワーがいます。加えて、先のアムステルダム市立美術館とは逆に英語発信でなくフランス語発信。
「マトリクスの上半分」に行くには、どうしてもフォロワー数などの「量」も必要で、そうなるとどうしても英語でないアカウントはそれだけ非常にハードルがあり、だからポンピドゥもその知名度と比較するとフォロワー数は少ないともいえるんですが、影響力のスタイルは「Broadcaster」なんですよねー
そして確かに、スコアの詳細で「拡散力(amplification)」の値をみると、他 3 館よりも高いスコアになっています。
たぶん、提供する情報などの内容が独特だったりするんでしょう。こちらも宿題 2 です。
そして、3 方向のうち、一番館数が多く、スコアも平均 50 台で「マトリクス上半分」のボリューム・ゾーンとなっているのが「Thought Leader」。
■Thought Leader
- 業界内の思考をひっぱるリーダーである
- 周囲からは、関連ニュースを教えてくれる人というだけでなく、ご意見番としても注目されている
- 日々の動向を理解するために必要とされている
スミソニアン博物館や大英博物館など、最大手のミュージアムもあるけど、フォロワー数数千のものも入ってきてるし、ベルギー、オーストラリア、スペインなどのミュージアムもある。
データを見ているだけでは Pundit との違いがよくわからないのだけど、、
Pundit と Thought Leader 各 1 館ずつ似てる ミュージアムをピックアップして、ツイッターや Facebook ファンページみてみるとなんかわかるかな。これは宿題 3 ですね。
広く影響力を持ちたいミュージアムが目指す 2 つの方向性
以上、
Klout スコアとツイッターのデータから、「平均的なミュージアム・アカウント」よりも影響力をもったミュージアム・アカウントはどのようなスタイルなのかをみてみました。
これにより、広報としてちゃんとしたアカウントである、という基本をクリアしたら、
- 業界等に対する館の意見や提案を発信していく「Pundit」「Thought Leader」タイプ
- 自分の館以外の情報やトレンド等も広く集め、発信していく「Broadcast」タイプ
のどちらかを目指していくのが、オンライン上で影響力を強めていく方向性なのではないか、というのがぼんやり見えてきたのではないでしょうか。
これって、以前書いた「ブランド・ジャーナリズム」の話につながってますよね。。
■ソーシャル・メディアで「いかにつながるか」(後半/ブランド・ジャーナリズム編)
※ちなみに、この話の前編で事例として取り上げたバンクーバー・オペラは、Thought Leader にカテゴリされていました。
■ソーシャル・メディアで「いかにつながるか」(前半/事例紹介編)

Abdi Roble Gallery Talk / Plains Art Museum

この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。さて、では次の課題となってくるのが、
オンライン上でのコミュニケーションに優れていると思われるこれらのミュージアムが、
「スタイル別に、実際、どういうコミュニケーションをとっているか」
です。
これが見えてくれば、たとえば今、第四象限の Specialist にいるミュージアム・アカウントも、より影響力を増すスタイルへステップアップできるヒントが見つかるかもしれない。(※1)
日本のミュージアムはほとんど第四象限、第三象限に入っているので、一館でも二館でも上半分へ行くアカウントが出てくれば「ミュージアムの WEB での存在感」というのももしかしたら少し変わってくるかもしれません。(※2)
ただし、ここまでくると、実際のミュージアムが行っているコミュニケーションの内容ややり方まで見ていかなければならないことと、
とはいえ、もちろん Klout スコアは完璧なわけではない、どころかまだまだ不完全(だって、Blogger 以外のブログとかローカルの SNS とか全然考慮してないし)ので、はっきりと分け切れないところ、整合性がとれないところも出てくるだろう、
ということで、ちょっと時間をとりそうです。
連休中ちょっとみてみようと思うけど、自分への宿題にしようと思います。
結構面白そうな発見があったら、早速報告します!
というわけで、来週は何書くかまだ決めてませんが、オヤスミもないので、月・水・金の 8 時にアップしまーす。
いやー、今週は、月・金休みで毎日更新にしちゃったので、実は結構きつかった~~~~笑
(※1)
ひとつ、言っておきたいのは、別に「上半分を目指すこと」がすべてのミュージアムにとって最適の解ではないということ。
例えば、トップ 10 スコアに入るサンフランシスコ近代美術館(SFMoMA)は、第四象限の networker となっていますが、これは、SFMoMA が地元サンフランシスコとのつながりを大事にし、自覚的にコミュニケーションているのと関係があるのではないかと思っています。
(たとえば、前も書きましたが、ツイッター上でサンフランシスコ・ジャイアンツのことを堂々と?応援しています。挙句の果てにロゴをお遊びでジャイアンツのものと合体させてしまったりするほどです)
同じく、ミュージアムのソーシャル・メディア活用ということでは常に一歩リードしているブルックリン美術館が、specialist であることも、地元重視の美術館であることとつながりがあるかと。
とことん地元の人重視ということであれば、specialist や networker スタイルでスコアをどんどんあげていく=影響力をあげていくという戦略もありでしょう。
(※2)
ちなみに、調べた中で1館だけ、十和田市美術館が第二象限である「Curator」に位置しています。
上にあげた 3 スタイルではないのだけど、何が違うのかは関心があります! 宿題その 4
http://artsmarketing.jp/archives/1983影響力を持つ(ミュージアム)アカウントになるには――Klout からみる WEB コミュニケーション・スタイル(2)http://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/09/0922eyecatch-150x150.jpg*arts marketing.jp