クリエイターにお金が集まるプロジェクトとは

さて、昨日に続き Kickstarter(KS)について。

昨日は、KSの概要、実績とその性質について書きましたが、今回はもうちょっと細かく、実際どういうプロジェクトが成功しているか、について書こうと思います。概要的な紹介が続きますが、お付き合いくださいまし。

カテゴリごとの資金調達実績

まずは、どんなカテゴリがより多くお金を集めているのか。
引き続き、公式による2年間のデータがこちら


※クリックすると拡大されます

(1)Film: $19,717,790
(2)Music: $13,094,547
(3)Design: $3,601,851
(4)Art: $3,184,732
(5)Publishing: $2,732,501
(6)Theater: $2,570,503
(7)Technology: $1,748,109
(8)Photography: $1,679,361
(9)Food: $1,583,063
(10)Games: $1,052,557
(11)Comics: $943,118
(12)Dance: $645,492
(13)Fashion: $554,048

今のところ、映像と音楽が圧倒的です。が、各カテゴリのプロジェクト総数が公開されていないので、けして映像や音楽がお金を集め易いというわけではない。実際、サイト中の「MOST FUNDED(今までのプロジェクトの中からもっとも多く資金調達した順に紹介している)」のベスト10をみると、カテゴリはこんな感じです。

(1)TikTok+LunaTik Multi-Touch Watch Kitsデザイン $942,576調達(6,283%)
(2)Capture Camera Clip Systemデザイン $364,698調達(3,646%)
(3)SAVE Blue Like Jazz! (the movie)映像 $345,992調達(276%)
(4)Eyez by ZionEyez HD Video Recording Glasses for Facebookデザイン $343,415調達(624%)
(5)Coffee Joulies ? your coffee, just rightデザイン $306,944調達(3,230%)
(6)HexBright, an Open Source Lightテクノロジー $259,293調達(836%)
(7)Rise and Shine: The Jay DeMerit Story映像 $223,422調達(103%)
(8)Minecraft: The Story of Mojang映像 $210,297調達(140%)
(9)Decentralize the web with Diasporaテクノロジー $200,641調達(2,006%)
(10)PadPivot, lap & desk stand for your iPad,Tablet, or E-readerデザイン $190,352(1,903%)

5つがデザイン、3つが映像、2つがテクノロジー、ということで全体の調達額では3位のデザインが圧倒的に多い。なんと、トップ10入りプロジェクトでデザイン全体調達額の60%を占めているんです。(テクノロジーはテクノロジー全体の26%、対して映像は映像全体の4%)

プレ・オーダー・モデルと、”利他主義”モデル

以上のことからもなんとなく類推できるように、KS には「お金を集め易い」プロジェクト・パターンというのがあります。
そのあたりをわかりやすく書いてるのがこちらのエントリ

Successful Kickstarter Campaigns(5.11.2011)

自身も映像作家で KS で資金調達をした Garrett 氏が(彼の場合は、”辛くもなんとか”調達できたパターン)自分自身の経験を元に「KS で成功するには」について書いているんですが、この中で彼は KS のプロジェクトは大きくわけて下記2つに分かれると言ってます。

・プレ・オーダー・モデル(ウェブショップとしての KS)
・利他主義(altruism)モデル(募金箱としての KS)

で、「目標額を大きく超えた大成功」をするにはプレ・オーダー・モデルしかない、と断言しています。

プレ・オーダー・モデルとは、「これを作るから支援してくれ」→「支援してくれた人には作ったもの(or プレミア・モデル等)をあげるから」というもの。
たとえば、上記ベスト10で1位をとっているプロジェクトは iPod nano を腕時計にするキットを作るというもので、当時日本でも一部話題になってました。(※1

つまり、「ほしいから」支援するんです。支援するっつか、買うんです。たのみこむ的イメージですね。
店で買えないものだったり、一点ものが欲しいといった感情なので、「応援しよう!」という感情はそれほどないのではと思います。だからこそ、人の心を捉えるプロダクトなどであれば、目標額に関係なくどんどんどんどん人からお金が入ります。だって欲しいんだもの。まだ売ってないような、でもステキーな奴をいち早くゲットできるっていいじゃん。
実際、iPhone 周辺アクセサリの世界は、KS 発でユニークかつ優秀なものが数々誕生しています。(※2

対する「利他主義モデル」は、「支援しなきゃ心」をあおるモデル。多くの芸術およびエンタメ系は、まずはこちらのモデルになるでしょう。
で、garret 氏も指摘しているとおり、これはうまく人々の「支援しなきゃ心」を刺激できたとしても(それが出来るかできないかはまた別課題)、プロジェクト目標額に達成した時点でいくら日にちが残っていても「ここは支援しなくても大丈夫」になるので「目標額を大きく超えた大成功」になることが少ない。

たしかに、ベスト10をみても、こちらのタイプと思われる「映像」は、プレ・オーダー・モデルであろうデザイン、テクノロジー系プロジェクトに比べ、目標達成率がかろうじて100%を超えているものもありそれほど高くないです。
どんだけ最初の目標額が高かったんや、という感じだけど(笑)、利他主義モデルの場合はこのくらい目標額を控えめにしないほうがよさそうですね。

——————

とはいえ!
「利他主義モデル」な芸術・エンタメ系であっても「大幅な成功」をしている例もあります。
このブログを読んでいる人は、というか、私自身がそっちの方が気になります。そういう例がないと困ります(笑)。なので2つ紹介します。

が、今回はここまで(笑)。
昨日のエントリ読みながら、「長いな。。」と思ったので。嘘です、時間がないからです汗

明日は2つの事例を紹介しましょ。たぶんね。
ひとつはプレ・オーダー・モデルもプラスした美しいプロモーション、もうひとつはけっこうトリッキーな感じですかね。。

KS 以外のことも書きたいのですが、もう少々お付き合いください。

※1
この記事とか
TikTok、LunaTik – iPod nanoを腕時計にするキット、Kickstarterから1週間で30万ドルを調達(11.23.2010)

※2
この記事に詳しいです
How Kickstarter is reinventing the iPhone economy

[参照資料/サイト]
Happy Birthday Kickstarter!(4.28.2011)
Successful Kickstarter Campaigns(5.11.2011)

クリエイターにお金が集まるプロジェクトとはhttp://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/08/081011-150x150.jpg*arts marketing.jp
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Kickstarter は2年でどれだけクリエイターを助けたか

復活!最初のエントリは、WEBサービス Kickstarter について書きたいと思います。

なんでか知らないけど、ここ最近 Kickstarter を超ウォッチしてます。ちゅうても、実際に使うのではなく、その場で行われる人々の行動の傾向、そこから何がおきようとしているのか、そういうところに関心があるのですが。

初めて書くので、まずはKS の概要実際どれだけ実績があるのかというとことろを紹介したいと思います。

クラウド・ファンディングとは

まず、Kickstarter(以降、KSと略します)とはなんぞや、ですが。

KS とは、クリエイター/アーティスト対象のクラウド・ファンディング・サービスです。
クラウド・ファンディング(Crowd Funding)っていうのは、何かプロジェクトを立ち上げる際必要な資金を、これまで少数の企業/個人の(1社/1人あたり)多額な投資によって集めていたのを、「多くの個人」から「少額の支援」を集めようというもの。
理論上世界中から支援を受け付けられるネットとその決済を利用することによって一気に現実的になったサービスで、たぶん今、一番有名なのは今回取り上げる KS ですが、日本でも今年になって CAMPFIRE(6月ロウンチ)とか、READYFOR?(3月ロウンチ)とかいろいろ出てきています。KS だって2009年4月からなので、まだまだ新しいサービスですね。

もちろん、こういった仕組みは昔からいろいろあるけど(例えば、ミュージシャンへのファンドを中心としたミュージック・セキュリティーズなんかは10年以上あるサービスです)、KS を中心とした最近のサービスに共通しているのは、見返りが金銭という「投資」ではなく、金銭以外のもの・・・限定の制作物だったり、クローズドなイベントの権利だったり、というところなのかなと思います。※1

つまり、プロジェクト立ち上げ側からしたらお金集めの場なんですが、支援する側はお金以外のインセンティブが働いている、、ということ。ここに関しては後でも触れます。

KS はこのクラウド・ファンディングをクリエイターやアーティストの資金調達に特化しているサービスなんですね。

ざっと仕組みを説明すると、まず、クリエイターたちは、資金が欲しいなと思った時に KS 内にプロジェクトを立ち上げ、動画とテキストで自分たちが何をやろうとして、どのくらいお金が必要なのかをアピールします。
”いつまでに(プロジェクト立ち上げ日から30~90日の間で設定)””どのくらい資金が欲しいか”の目標をかかげ出資者を募るわけですが、その際に「Pledge」と呼ばれるプロジェクト出資者への「見返り」を設定します。
ちなみに、KS 上では出資者のことを「Backer」と呼ぶんですが、1ドルの Backer にはこれ、10ドルの Backer には、、、100ドルの Backer には、、、と、出資額の多寡によって見返りを変え、最高1万ドルぐらいまで提示していきます。
※ここの「Pledge」の幅と内容が結構肝のようで、それに関しては別エントリでいつか書く予定。

で、最初に設定した期間内に目標額を達成したら、プロジェクトを立ち上げたクリエイターは集めたお金全額をゲット(目標額達成後も期間終了まで集められるので、目標を遙かに超える多額な資金を得る人もいます)、達成できなかったら0(all or nothing)。
もちろん、支援した方も支援プロジェクトが達成しなかったら、見返りをもらえないわけです。原理はグルーポンに代表されるフラッシュ・マーケティングと同じですね。

2年間の支援額とプロジェクト数

ま、聞いた感じ面白そうなんだけど、実際どのくらい使われていて、どのくらい成功してて、どのくらい儲かっているのよ? というのがまず気になるところだと思うので、早速そのあたりのデータをご紹介しておきます。

ちょうど、ロウンチから2年たった今年4月28日に、Kickstarter がここで公式に今までのデータをいろいろ公開しております。

■2年間の支援額(Pledge)

トータル:$53,107,672-
そのうち
成功プロジェクトを支援した額:$40,000,000- →実際に KS の売上となるのはこの中の手数料5%
失敗プロジェクトを支援した額:$7,000,000- →集めたけどパーになった額(ノД`)
進行中プロジェクトを支援している額:$6,000,000- →たぶんこの中から85%ぐらいが成功するはず
成功率:85% ※成功額(40M)÷(支援全額(53M)-進行中(6M))

月毎の支援額の経過はこんな感じ。昨年末既にちと停滞してるけど、今年3月ぐぐっとのびてますね。
※クリックすると大きな画像が観られます。

■2年間のプロジェクト数

トータル:20,371
そのうち
成功:7,496
失敗:9,700 ※内、1ドルも集められていないプロジェクトは21%(約2,000強)
進行中:3,175
成功率:43% ※成功数÷(トータルー進行中)

ちなみに、2011年6月の情報によると、週2,000ぐらいの応募がある中、応募の時点で不採用となっているプロジェクトが40%あるらしい。(※2) そのうえでのこの数字。

上の支援額のデータをあわせると、プロジェクトの 43% に 85% のお金がいっているわけで、当たり前なんですが、大多数の人が成功プロジェクトに支援していること。目標額が違うのであまり参考にならない数字ですが、一応単純計算してみると、成功プロジェクトは平均 $5,300 集めており、対して失敗プロジェクトの方は、そのうち1ドルも集められていない21%をのぞくと、平均支援額は $913。やっぱり、だいぶ違いますね。

プロジェクトが成功にぐぐっと傾くティッピング・ポイントや、その成否を分けるポイントは、これまた別エントリでいずれ書きます。。
でもって、月毎のプロジェクトの推移のデータも引用しておきます。
※クリックすると大きな画像が観られます。

見ず知らずのクリエイターを支援する人たち

では、支援した人はどのくらいいたのか。それを示すデータがこちらです。

■2年間の支援者(アカウント)数(Backer)

トータル:591,773
そのうち
2回以上支援している数:79,658(13%)

なにげに私が一番おお!と思ったのはこの数字です。

現実的に考えて、いくらネット上で集めるといったって実際の支援者はリアル友人がなってくれる可能性がすごく高いでしょう。見ず知らずの人にお金を支援するアクションはよほどのことがないと取りづらいけど、逆に友人知人であれば Facebook やメールでお願いされると「まあちょっとだけ」と思いますよね。でもって、KS でプロジェクトを立ち上げる友人知人が2年間で何人もいる、って状態の人は、まだ少数だと思うわけです。

となると、2回以上支援している 13% のうち、少なくとも 10% ぐらいは「友人・知人以外」見ず知らずの人のプロジェクトに金銭支援をしているということではないでしょうか。これって、結構すごくないですか?

たしかに、6月末ぐらいからずっと KS ウォッチャーしていて、データもとったりしてたんですが、いるんです、一人で何十、何百ものプロジェクトを支援している人が!
そして、どでかく資金を集めているプロジェクトは、そういうプロシューマーならぬ「プロ Backer(←笑)」にきちんと支援されていたります。

プロ Backer! まさに、彼等の存在、彼等を駆り立てるモチベーションってなんなんだろうというところが KS(とかクリエイター系クラウド・ファンディング)に対する私の最大の関心のひとつだったりします(他にもいろいろあるんですが)。

KS がグルーポンと違うのは「今ないもの(=価格がないもの)」が対象ということ。(※3)このエントリも最初に「プロジェクト立ち上げ側からしたらお金集めの場なんですが、支援する側はお金以外のインセンティブが働いている」と書いたけど、人の心意気だったり、ちょっとかっこつけて言うと未来だったり、そういう”今ないもの”や”人自身”に積極的にお金を払おうとする人たちを既に7~8万人おさえているというのが、KS の今後の資産になっていくのではと、私はそう思ってます。

実際、支援額のところに書いたけど、手数料5%なんで、進行中プロジェクトに支援している額の85%をいれたとしても、単純計算で2年間で KS 自体の売上は225.5万ドル。
サービスの内容からするとすごいと思うけど、とはいえそれほど大きな規模ではないし KS 自体はニッチなサービスであることは変わらないと思うけど、コミュニティ・ビジネスの新しい視点として、なんらかのヒントがあるのではないかなあと感じている次第。もちろん、アート・マネジメント分野を学んでいた視点からすると、アーティスト活動の新しいあり方としての可能性は言わずもがなですね。そっち視点からのエントリもかきますよ(こればっか)

しかもですね、おそらく Backers の心理は「支援」とか「寄付」とかそういう100%善意ではなく、ギャンブルっぽさとか他で買えないものをゲットするちょっとした優越感とか、そういうものだと思うんですよね。つまり、「がんばって」ない。
KS のようなサービスはニッチかもしれないけど、そこにある心理自体はそれほどニッチなものでもない。
そういう意味では、芸術団体の通常の資金調達にも大いなるヒントがあるんじゃないでしょか。

とゆーわけで、明日は、KS の中でももう少しアート(ファイン・アート)の実例と課題というか注意点に突っ込んだ話を書きますべか。でも、まだ次のエントリは一行も書きだしていないのでまだ不明。
今回は公式データだけど、ウォッチして貯めた独自データも分析して公開したいす(゚∀゚)

さて、「8月平日は毎日エントリしよう」達成まあと16回。昨日から始めたばかりですけどね笑

(※1)はてなキーワードにはこんなふうにかかれてます。(まだ日本のwikiはないっぽい)
クラウド・ファンディング
KS 等は基本購入型、+別に見返りいらないよ、という人は純粋に金銭支援だけするという寄付型も合体しているという感じ。
似た感じで言われるワードとしてはマイクロ・ファイナンスがありますが、こちらはグラミン銀行に代表されるような本当に金融の仕組み。
ちなみに、購入と寄付の境界について書かれた記事はこちらがよくわかるのでご参考あれ
購入と寄付の境界線 ~ Kickstarterに垣間見る境界線のゆらぎ

(※2)不採用になる理由は、クリエイティブに関係のない題材(チャリティ等)だったり、目的が曖昧なもの等 

(※3)クリエイターがハンドメイドのものを販売する etsy のようなECサイトとも、「今ここにモノがない」点が違いますね。

[参考資料/サイト]
Happy Birthday Kickstarter!
What percentage of project ideas get denied on Kickstarter? (会員制サイト)

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blog 復活します!

ものすごーーーいお久しぶりです。

3月の震災後に一度書いてきり、全然更新しとりませんでした。
3末に無事修士を修了以降、日々いろいろなことに足をつっこみながらがんばっとります。
基本はアーツ・マーケティング名義でフリーで仕事をしていますが、慶応義塾大学SFC研究所の上席所員(訪問)という名刺ももって活動してる、そんな感じです。業務内容とかアーカイブとか1年更新してなくていろいろ変わっているのでしないとですね。プロフィールも付け足さないとだし。
サイト、前に co.jp ドメインも取得しているので、こちらの .jp は個人の発信系を集めたものとして、co.jp を純粋な会社ページにしようかなとかちょっと思ってます。まあ、一気にはできないのでちょっとずつ。。

あそうだ、あと、けっこう今更だけどちょっと前から tumblr を始めてます。

*ARTS MARKETING.JP tumblr

はじめましたっていうか、1~2年前までやっていて一旦中断していたのを、以前のネタは全部捨てて再開、、という感じ。
タイトルに書いているとおり「主にアートとIT、ソーシャル・メディア関連記事クリップ 他、ITビジネス全般など関心事なんでも」扱いますよ。
今は、いろんなところのリサーチの報告書とか、動画とかの保存庫みたいになってます。ご関心ある方はどうぞー
私、やっぱり日々のメモがストックされて、あとでタグやカテゴリでソート閲覧するタイプが落ち着くんです。(※1)
フローのツイッターは向いておらず、本当の意味では全然使いこなしていないんだと思う。

でもって、ブログです。
まあ一応ツイッターだG+のなんだの一通りやってみているわけで、そのおかげでブログ書く暇というかモチベーション自身がなくなっているのもたしかなんですが
やっぱ、ブログはホーム感を感じるし、ある程度まとまった文章を書きたいなという時期でもあって、一念発起で復活しようと思います。

なのでまずは! 今月いっぱい平日毎日書いて見ようかと。(い、いったぞ!!!!!!!)
超私事ですが、先月初めから、こちらも一念発起でワイン断ちとジム通いを始めたわけですが、それも「毎日やる。でも7月だけ」って決意の仕方をしまして、それだとわりとがんばれるんですよ。
でもって、月末には意外といい効果が出ていたりして、もうちょっと続けてみようかな?と思うわけです。酒にいたっては、ワイン以外も飲まなくなり、すっかりソフトドリンカーになりましたよ! 毎晩ワインのんでましたのに!
この手法?をブログ書くのにも適応しよう、というわけで平日毎日書く、でも8月だけ、です。(8月もう1週間以上すぎてるけどね。。)
ジムや禁酒よりハードル高いと思うけど、お酒やジムも絶対無理と思っていたから、ね。

とはいえ、毎日書くのはやっぱり物理的に難しかったりするので、書きだめにチャレンジしてみようかと。
書けるときに書き溜めて小分けにして、タイマー更新していこうと思います。更新時間は、なんとなく平日の22時。(このエントリも22時に更新されているはず)昔きいた話だと、ツイッターのアクセスが一番多いのは22時30分頃らしいんで。
まとまった時間があるときに、一気に長い文章書くのはわりと平気(むしろ、長くなる、いつも…)なので、できる気がする! がんばれ私!

というわけで、内容は今までどおり「アート×IT」とか「アート×ソーシャル・メディア」な感じで、
いろいろネットを使ったプロモーションとかマーケとか、新しい概念とか、、を中心に紹介しつつ、
かつ、最近クラウド・ファンディング
(プロジェクトのために少額の資金をたくさんの人から出資してもらう。クリエイターやアーティスト、芸術団体の新たな資金調達方法として注目されています)にいろいろな面でで可能性と面白さを感じているので、そのあたりのことも書きたいなと思っています。
おそらく海外記事紹介も多くなるはず。

と、いうわけで最低17エントリ(明日から31日までの平日の数)、がんばってみますですー。
もう明日の分はこれからセットしますよん。明日は早速、最近はやりのアーティストの資金調達手段としてのクラウド・ファンディングのさわりのさわり……に関してです。
(タイマー更新しようとすると、「次回予告」ができるんだねー。新鮮★)

しかし、過去のエントリもいろいろ整理したいし、院時代の資料とかもアップして、、、うーん、いろいろしたいなあ。
夏休みの宿題ですね。はい

(※1)
あと tumblr は、ヴィジュアル中心に出来るのが好き。ファッション系やメディア系での活用はかなり進んでいるようですが、私の知るところミュージアムはほとんどないですね。ソーシャル・メディアはなんでも活用するブルックリン美術館ですら、アカはあるけど、あんまり活用されておらず、ギャラリーはちらほら見かけるけど、がーんと大きいのはない。
著作権の問題があるのだろうけど、アート系も向いているんじゃないかなって思ってるのだけど。

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1週間後の備忘:芸術は世界と人間の可能性の扉だと信じること

 3月11日(金)の東北地方太平洋沖地震から1週間が経った。

 あっという間の1週間だったが、今日本にいる人々、そして日本に家族・友人・知人を多くもつ海外在住の人々にとっても非常に濃い1週間だったのではないか。個人的にも、この1週間で今回の地震とはまた別のところで、大変悲しいこともあり、心がおおいに揺れ、しかしだからこそ見つめ直せた1週間でもあった。
せっかくなので、少し今の自分の思うことを書き残しておこうと思う。

※ ※ ※

 その日、私は高いビルの上の方に閉じ込められ結局は非常階段でおりたり、まったくつながらない iPhone にいらいらしながらなんとか同居人と合流して、最近大病から復活したばかりの彼の知人をホテルに宿泊させるべくキャンセル待ちの待機をしたりしていたが、基本的には何時間もかけて歩いて帰るようなこともなく(奇跡的にキャンセル待ちでとれたホテルの部屋に、結局泊めていただいたりしたので)東京にいた人たちの中でもラッキーな状況にあったと思う。

 なので、改めて今回の震災の脅威を知ったのは、部屋にチェックインして23時頃にみたテレビの映像である。「大きな地震だったけど、それほどの被害がでていないといいのだけど……」と甘いことを考えていた私の想いをぺしゃんと一瞬にしてつぶすような凄まじい映像の数々。

 夜はほとんど眠れずに、ツイッターのタイムラインをみては友人・知人と会話したり、有効ではないかと思うつぶやきをRTしたり、地震速報に身をかたくしたり……とまんじりともしない一夜を過ごした。

 そして、多くの人々がその夜感じていたと思うが、私もやはり自分の無力さに落ち込んでいた。今まで、アートとかなんとかたいそうにいっていたけど、私が頑張ってきたものって意味があるのだろうかと。今まで、さも一番大事かのように言ってきたことがひどく幼く、ちっぽけなことのように思えた。この状態で、そんなものは何も役に立たない。これからどうしようかなあ、とうつらうつらと考えてはため息をついていた。

 翌日家に戻り、こちらも幸いなことにほとんど被害はなかったが、一夜を越した後わかる惨状にますます気がふせっていった。今までみたこともないような速度で流れるツイッターのタイムラインも(私のタイムラインは、ネガティブな発言はほとんどなく、有用なものばかりだったけど)、なにができるだろうと気だけが焦って、心が逆立っていくような感じがした。

 こりゃだめだと思い、テレビとネットを消し、ご飯を食べ、風呂に入り、寝ることにした2日目の晩。幸い、そこまで私の神経は細やかでなかったようで、前日の疲れもありぐうぐう寝ることができた。

ご飯を食べ、寝るという行為は、本当に重要である。
翌朝、地震以降ようやく少し落ち着いている自分があった。
(余談だが、痴呆で専門施設に預かってもらっている祖母を日々世話している母から聞いたのだが、ご飯を食べないと1日のうちでも明らかに痴呆が進むという。ご飯を食べるとかなりましになる。ご飯と脳の働きは直結しているのだ)

 落ち着いて考えてみて、まず、自分にできる範囲を認めようと思った。

それは、節電、寄付(目安は自分をやとえる3日分 by 糸井重里さん)、自分と近しい人たちの健康に気をつけること(ご飯食べて寝る)、自分自身が有用だと思ったり元気の出る言葉だけ共有していくこと。

それしかまずはできないのだから、それをちゃんとしようと思った。無理に焦って、自分をなくすのだけはやめよう(=自分のことをまず大事にしよう)と決めた。

 次に考えたのが、私が「やるべき」ことである。

 できることとやるべきことは厳密に分けて考えた方がよいと思う。
ライフラインに関わるような仕事の人でない限り、今のこの状態でできることは悲しいほどに少ない。(その悲しさを抱え込みすぎ、焦りばかりが募ると強迫観念になりかねない、やさしくて責任感のある人ほどきっと)
しかし、これからの復興、未来に対し「やるべきこと」は全員に等しくある。と私は思ってる。できることをするのは重要だが、「今すぐできること」に没頭するあまり、本当に「私がやるべきこと」をないがしろにしてしまうのは長い目でみて、自分に対しても社会に対しても得なことではない。
(なんとなく、ほら、重要度×緊急度のマトリックスのイメージで)

 そう考えた時に、まず、たとえば「私は今んとこアートに関わってる人だから、アートで何かを」「ウェブに詳しいからウェブで何かを」とかそういう考えに囚われない方がよいなと思った。おそらくほとんどの人が感じているとおり、震災を境に、物理的状況も当然のことながら、今まで皆の心の中くすぶっていたなにかが解き放たれた結果、日本の社会のシステムは抜本的に変わっていくのだと思う。そうなった時「私がこれからやるべきこと」は、今までやってきたことに囚われず、きちんと自分の心に耳を傾け再設定しないときっとあとで噛み合わないところが出てくる。

 さて、どうするか。

 私の場合、まっさらにしてみた(つもりの)後にそこにやってきたイメージや感情、「やるべきこと」と感じたこと。それはやっぱり、驚くことに「芸術」とか「エンタテイメント」のことだった。

 たとえばツイッターのタイムラインをみているだけでも、たとえ混乱が起き、ネガティブに巻き込まれそうになっても、どんどんそこにいる人たちの力で自浄されていっているのを感じる。
 皆が一生懸命「ポジティブなもの」に向かい、それを届けようとしているのがわかる。
 また、節電などを通して、今まであった過剰なものがそぎおとされ、むしろこのくらいでよかったんじゃない、と前向きに事態が好転しているのを頼もしいなあと思う。
 地震発生後そこここでみられたという「助けあう気持ち」は言わずもがな。
(ちなみに、私がとまらせてもらったホテルは宿泊料を半額にしてくれたし、ずっと長居をしていたラウンジのスタッフの方含め、余震があるなか本当に細やかな対応、わがままもきいてくれて感動した。絶対使おうと思う!)

 これだけの被害と犠牲があった事態を「ピンチはチャンス」と呼ぶのはまだはばかられるが、でも、明らかに「新しい価値観」が自然にでてきているなあとこの1週間いろいろなところで感じた。

 そこで私が思ったのは、そういった「新しい価値観」を広く世に問い、「ここだよ」と示すこと、そしてその価値観に対応する人々を増やすこと、それってやっぱり、芸術やエンタテイメントの大きな役割なのではないかということだった。
少し大げさな言い方をすれば「進化を促す役割」があると。

 実際、私は節電対策も含め、ここ数日、長い間まともに読んでなかった小説をまた読み始めているが、素晴らしい思索の末に生まれた文章は、明らかに人を一歩前進させる、進化させることを実感し、この想いを強くした。
(本当に、余裕のある地域、環境にいらっしゃる方は、感受性が鋭くなっている今の時期に、素晴らしい芸術に触れることをおすすめする。鈍感な時よりも、多くのことを感じられ、「奥にあるもの」に少し触れられる感じがするから)

 そういえば、と思って、昔のメモ帳を引っ張り出したところ、2年ぐらい前、私はこんなメモを書いていた。

美術は世界への扉
舞台は人間の可能性への扉

 書いた当時は今とは少し違うニュアンスでメモしたと思うが、でも、今も変わらず私はこう信じている、とこのメモをみて思った。
(あえていうなら、今は別に美術、舞台など分ける必要もなく、すべからく優れた芸術やエンタテイメントは世界の扉だし、人間の可能性への扉ということかな^^)


屋久島でみた天使の梯子

 というわけで、結局、まっさらにしたつもりのくせに、結局いつものところに戻ってきたんだけど(笑)。

 私は今までと変わらず、”新しい価値観を示し、導く役割たる芸術やエンタテイメント”を、少しでも多くの人に伝えて、少しずつ皆がよい方向に変わっていく、そんなきっかけを作るシステムを経済活動にのせることを「自分がこれからやるべきこと」としてとらえようと思う。
芸術もその伝え方も絶対変わっていくから(震災以前からそれは急激に変わっていったわけで)、そのことに常に敏感であること。そのことをあきらめない。自分自身と、私が大好きな芸術とエンタテイメントのことを過小評価しちゃだめということ。(震災の夜の私は、確実に、過小評価していたと思う)
そしてそのために、すでに動いていくこと。(震災前から準備していたことをフルスピードで進めるだけだけど)

 なんだよ、ここまで書いといて結局一緒かよって感じでごめんなさいだけど、個人的には、ぐらぐらに揺れながらもそこへ立ち戻った自分、それがなんだかとても嬉しいんです(^-^)。
だから、今日はちょっと備忘の意味をこめて書いてみました。

※ ※ ※
 最後に……
 これは、今すぐ「できること」(そして「やるべきこと」と交差すること)として自分のできる範囲で協力している活動があります。


ACT FOR HOPE
ツイッターアカウント @ACT4JPN

HAKUHODO ART PROJECT 他、多彩な活動をされている近藤ヒデノリさん発起人で震災後に作られたチャリティ活動団体です。アーティストやクリエイターによるチャリティ・オークションや、全国的に起きている同種の支援を一覧、かつ作品販売→寄付できるようなポータル・サイトを構築すべく、ボランタリー参加のメンバー20名弱で活動中。皆、本業あるなか、凄まじい量のメールをやりとりしながら、動いています。
私は、事務局長を務める MCDN として参加表明しましたが、主にやはりWEB部分で自分の知恵や力になる人をつなぐなどの提供をしています。

 もしも、上記活動にぴんとくる方いらっしゃれば、ひとまず Facebook にファンページがあるので、是非ジョインしてください。info★artsmarketing.jp や info★mcdn.jp (★を@に)へのお問い合わせ、名乗りをあげてくださっても構いません。

 今日は、まあタイミングがタイミングなので、けっこう個人的なことを書いたけど、次回からは(次回更新いつだよって話。。)またいつもどおり、アートとITのことを書けるときに書いていこうかと思います。まあ、でも書きたいときには、好きなことかくんだわ。だってそれがブログだもん(やけくそ)。

 最後になりましたが、今回被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。
 一人でも多くの方の救助と一日も早い復興がなされるようお祈りしつつ、自分の行動に変えていきたいと思います。

そしてここまで読んでくださった方々、どうもありがとうございます!

1週間後の備忘:芸術は世界と人間の可能性の扉だと信じることhttp://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/03/0320-150x150.jpg*arts marketing.jp
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【プレゼン資料紹介】SOCIAL MEDIA WEEK ミュージアム関連セッション

東京でも先日、ブリティッシュ・カウンシル主催の”アートとテクノロジーの未来を考える” DIGITAL CREATIVE CONFERENCE(DCC)なるものが開催されて、一部出席してみたりしたけど、ほんとここ数年、世界中でこの手の(アートとテクノロジー、メディアといったような)カンファレンスの数がぐっと増えたと感じる。私の関心分野である芸術機関とテクノロジーに関する報告書もいろいろ出てきた。
こういうものの性格上、たいていは現実の生活で感じる体感より「遅い」感じがして、ネットでいろいろ記事やドキュメントがあがっても、資料のためにブックマークするか、ツイッターで「こんなのあるよ」とつぶやくぐらいだったのだけど、ちょっと前から、ひとつひとつはそれほどでもなくても、それが集積したり、比較ができれば価値も変わるよね…というようなことを感じだしたので(逆に言えば、ツイッターでつぶやいたって、個人的にはなんの蓄積にもならんっていうか)、これからは時間がある時に、こんなイベントあったよ、報告書あったよ、事例紹介あったよっていうエントリもしておこうかと思います。

というわけで、さっそく昨日見つけたやつ。
2/7-11に9都市で開催された”SOCIAL MEDIA WEEK“(これ自体は、カンファレンスの集合体のイメージかな)において、ロンドンでミュージアムや教育機関に特化したソーシャル・ウェブのセッション”Building the Social Web for Museums, Galleries and Education“があり、その一部プレゼン・シートが公開されていたのでご紹介。

※ここのサイトで知りました。このセッションの主催をしたBrightLemon社ブログより。

7名による各10分のプレゼンテーションだったらしいけど、テクノロジー系2名、ミュージアム系4名+主催の BrightLemon 社より1名。
テクノロジー系、、といっても、お二人とも「セマンティックWEB=WEBを作る際に、「意味」を一定の規則で記述することにより、より精度の高い情報収集が可能になる構想(このあたりご参照)」に話が言っていたので、主催の BrithtLemon 社がそういうコンサルやっていたりする事情があるのかな、という感じも。
BrithtLemon 社はCMSのコンサルティングだしね。。

ま、気にせず紹介します。

テートと自然史博物館のネット上でのコミュニケーション事例

まずミュージアム系。
テート、自然史博物館(ロンドン)、ヴィクトリア & アルバート、ロンドン・ミュージアムのそれぞれデジタル・メディア関連を担当されている方々が登壇されたのだが、残念ながら V&A(ソーシャル・メディアを通じたコレクションと人々のコミュニケーション)とロンドン・ミュージアム(QR活用の事例など)は資料非公開。

とゆーわけで、まずテートのインタラクティブ・メディア部門プロデューサー Kirstie Beaven 氏から。

ネットを通じてオーディエンスといかにコミュニケーションを図っていくかについてのテートの事例紹介。

まず「オーディエンス」とは誰か?
ということで、現在テートは、従来のギャラリーに訪れる人とともにテート・オンライン(テートのWEBサイト)の訪問者、ツイッターやFacebookのフォロワーも「テートへのオーディエンスである」としている。最初の方に「テートのオンライン・ストラテジー」が簡単に紹介されているが、テートのウェブサイトはテートのオンライン・オーディエンスのためにある、と最初に銘打っているのね。

そういえば件の DCC のセッションのひとつでも「デジタル・オーディエンス」という言葉がキーワードとして登場していた。でも、これも、2010年11月にイギリスのアーツ・カウンシル他機関が出した報告書 “Digital audiences: Engagement with arts and culture online” (これもエントリせねばですね)を引用しての発言だったので、もしかしたら、イギリスのミュージアム界隈では “digital audience” とか “online audience” て言葉自体が流行なのかもしれない。

とかってつい書いちゃうのは、個人的にはまだデジタル・オーディエンスとかって区別するのってちょっとぴんときてないからかもしれないけど(笑)(オンライン上のコミュニケーションは必須だと思ってるけど、そうやっていちいち区別するのがまだぴんときていないだけ)

でもって、テートの事例なのだけど、まあ内容としては基本的なところ。(もちろん、PPTでみるだけであって、口頭で何をいっていたかはわからないけど)

などなど。

まあでも…… FB ファンページだけでも15万人いて、なにかポストするたびに何百人も「Like」するわけだから、そのページにどういう行動をとる人々が集まっており、だからどうコミュニケーションしていくかっていうのはすごく重要度高い課題だよなあ。。
どちらにせよ、今まではわりとミュージアム×IT的なものでも、「うちではこんなことしてます」という事例の外側紹介がどうしても多くなっちゃってるけど、じゃあどうやったらこんな巨大コミュニティができて、運営するのにどういう体制でどんなポリシーでやってて、、等の情報提供が急務になっている段階だな、と感じる。いまや、このぐらいのことをやるのは当たり前だから、じゃあどうやって運用するんだよ、というところだよね。(と、自分に言い聞かせている)

これは、自然史博物館(ロンドン)のインタラクティブ・メディア部門ディレクター Sheila Sang 氏のプレゼン。こちらも、ソーシャル・メディアを使ったアクティブなファンの作り方を、自然史博物館の事例で紹介しとります。

自然史博物館もFB、ツイッター、Youtubeはあたりまえながら、「自然に関心がある1300万人の人との質の高いコミュニティづくり」を目指して、公式サイト内に”NaturePlus“という自然に興味がある人々と専門家が交流できるフォーラムを作っているのだとか

ディスカッションやブログ他、ブックマーク共有やテーマを決めた投票、Nature Plus カードなるものを発行し、実際に博物館に集めた時に何か?を集めてウェブ上で閲覧できるような仕掛けも。

フォーラムの中では、例えば2010年11月の名古屋COP10(生物多様性に関する会議)に先駆けてオンライン・ディベートを行ったり(Big Nature Debate)、生物多様性のマップづくりのための調査にオンラインで参加してもらい、調査結果と画像を Google マップにアップしていく(Citizen science projects)なんてことも行っている。

若干、硬派ね。どのくらいのコミュニティ・メンバーがいて、活発なのかが気になるところ。でも、ディスカッションやブログ、コンテンツもちゃんと更新されてるし、はまる人ははまるのかなー。

いかにミュージアムの知をシステムに「見つけてもらう」か?

お次はテクノロジー系からのお二人+主催側のお一人のプレゼン資料

Drupal(CMSの一種)コンサル会社i01の創設者でありセマンティックWEBが専門のJohn Galvin 氏。個人的にはこれが面白かったかも。

まず、ミュージアムや教育機関を「蓄積された知識や技術、価値を世代から世代へ計画的に伝えるプロセスを担うもの」としたうえで、

「蓄積(=accumulation)」としては最高のプロフェッショナルなんだけど、「伝える(=transmit)」ことは全然できてないと指摘。

その理由として、たとえば、モナ・リザをぐぐったら Wikipedia が出る。次にヒットするのは、monalisamania.com。
※ バーミンガムのギフト・ショップがやっているらしきモナ・リザ情報?サイト。しかし、なんと about のところは日本語訳バージョンまで用意してあってびっくり!

でも、モナ・リザに関して、ほんとに豊かな知識の蓄積があるのはルーヴルだよね?
グーグルのミスか? いやいやBing でもヤフーでも1ページ目に検索結果としてルーヴルは出てこないよ…

と彼は言う。

そして、ルーヴルは、ウェブサイトにおける経験の拡大に集中しており、蓄積された知識にアクセスすることが難しくなってしまっているのだ……と。続く言葉は、ではなぜ、Wiki はアクセスされるのか? セマンティックWEBですよ!(ドヤ顔)

検索ってもう古いよネー的な空気も流れている昨今、(それこそ、FB普及地域・国では、”Like”の方が重要というようあな)ちと古いかもしれない? ちょっとそのへんよくわからないのだが、「ウェブサイトにおける経験の拡大に集中しているあまり」という下りは、よく見ているというか、まさにそういうトレンド真っ盛りだと思うので、耳が痛い関係者もいたのではないだろうか。

「一番得意で圧倒的な強さは知の蓄積なのだから、そこをまずシステムに”発見される”ようにしてください」というのは至極最もであり、”いかに共有するか”とか言ってるんじゃなくてまず、「モナ・リザ」が知りたい人のために真っ先に最高の知を届けるやり方を考えるのが、ミュージアムのミッションにも沿うのだろうな。。(自戒)

ま、若干彼と彼の会社の仕事の宣伝の役割もあったかと思うが、
「デジタル・データを集積」しながら、ジリジリと「モノを集積している」ミュージアムの立場ににじり寄ってくるネット側、
そして誰もがネットで知識にアクセスしようとする時代、知の集積たるミュージアムはどうするの?

といったところを図らずも考えてしまったプレゼンでした。

次のプレゼンもほぼ同様の内容である。人が興味をもっているのは「ドキュメント」ではなく「事柄」なのだから、システムが「事柄」にたどり着けるように設計しましょう、というような話。

最後に、このセッションを主催しているBrightLemonのディレクター、Leon Tongによるプレゼン、「アリストテレスから Facebook へ」。

キーとなる社会理論を紹介しつつ、それをいかに応用していくかという内容だけど、ちょっとありきたりで古いかな。
ま、社会理論の古典的な文献はいろいろのっている。

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以上が公開されている5つのプレゼン・シートでした。

2つのミュージアムの資料が公開されていないのは残念だけど、このセッションの構造的には「ネット上におけるミュージアムの知の存在感ってどうなの」というエンジニア的な立場のプレゼンと、「今、ミュージアムはどのようにネット上のオーディエンスとどう対応しているか」というミュージアム側の事例紹介みたいな感じだったと思われる。
日頃から、「ミュージアムやアートとは全然違う分野(私の場合は特にITとかビジネス関係)の人と、ミュージアム、アート関係の人が同じ土俵で共に未来を考え、実践できるような場を作りたいな」と思っている私としては、こういうの、日本でもどんどんできたらと思う。(MCDN の勉強会やイベントでもそういうところを狙っていきたい…)

まああとは、「デジタル・オーディエンス」ってなんなのさ、だね(笑)。私が咀嚼できていないだけだと思うけど、こういう「バズ・ワード」になりそうなものってちょっと警戒しちゃうから、どこが言いだしっぺやねん、というのも含め少し調べてみようかなーと思ったりもしています。

【プレゼン資料紹介】SOCIAL MEDIA WEEK ミュージアム関連セッションhttp://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/02/socialmediaweek_eyecatch-150x150.jpg*arts marketing.jp
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Google Art Project に人々はどう反応したか? その2

さて、長くなったので分けたエントリの後半だす。

前半はこちら
内容はこれ↓

  • GAP の概要と背景
  • グーグルと芸術機関の関係
  • GAP への反応(1)作品をみるってそういうことじゃないよね……という批判
  • GAP への反応(2)今までもあるサービスだよという指摘
  • GAP への反応(3)著作権/新しい鑑賞体験であること/パブリックの独占

後半はこんな感じです。

  • GAP への反応(4)ネットとアートの20年間との断絶
  • GAP への反応(5)オリジナルに対する感覚の変化
  • GAP への反応(6)さっさと GAP の時代を体験しよう!
  • GAP への反応(7)「コンテンツ・プロバイダー」たるミュージアムはどう対応していくか?

GAP への反応(4)ネットとアートの20年間との断絶

まあ、こうして批判はいっぱいあるのだが、同じ批判は批判でもちょっと変わった視点だったのが、今をときめく??ハフィントン・ポストより、どこぞの大学の教授の Andy Miah 氏による寄稿記事。

What Has the Internet Ever Done for Art? The Google Art Project and the Missing Net Art Movement(2.8.2011)

Andy 氏についてはよく調べていないのだが、”Human Futures: Art in an Age of Uncertainty”等の著作があることと内容から、メディア系美学系の方なのかなーと思われる。

彼は、GAPは素晴らしいとしながらも「GAPと、ここ20年でアートの世界に起こったことの間に大きな断絶があること」を最大の問題点として指摘している。つまり、90年代からインターネット・アートが提示してきた問題提議が、この GAP にはまったくないということ。

たとえば、ブラウザの広告をすべてアート作品に変えた Steve Lambert の「AddArt」プロジェクト。これはグーグルは認めるのか? GAP の中にいれるか? とか。


たとえば、グーグルは、アート好きにアートのイノベーションの最先端を提供すること、アートの再定義などを提案することだってできたのに、GAP は古典作品の展示であって、GAP によって集められる「美術館の典型的な常連」に、”ニュー・メディア・アート”が届くことはないだろう、とか。

そして、インターネット は Wikileaks や最近のエジプトの革命にも代表されるような、社会的、政治的、美学的に境界を壊す素晴らしいメディアなのに、GAPはデジタル革命の価値と同期していない、と。
そのうち、ハッカーが GAP のコレクションにグラフティを加えたり、21世紀のアート経験について声明をだすためにハッキングするのではないか? なんてことも書かれている。

正直、グーグルはもはやハッカーズ的企業ではない大企業ので、そういうつっかかり方(笑)は違うだろうと思うので賛同はしないのだが、でも、読み物としてはこれが一番面白かった。だって、全然思いもよらぬ論点だし、いちゃもんのつけ方が単純な懐古主義ではなく「グーグル・アート・プロジェクト」だけにネットとアートの関係からのものだったから。

これひとつで判断するわけではないが、こーゆー記事が読めるハフィントン・ポストはやっぱり面白いんだろうなとちょっと思ったりした。

GAP への反応(5)オリジナルに対する感覚の変化

さて、今まで総合系ニュースの中からいろいろピックアップしたけど、実はテック系やアート系では、私がみた中ではあんまり面白いのはなかったのだ。けっこう紋切りっぽい感じというか……。
でもひとつだけ、アート系のサイトから。
で、実はこれが一番私にしっくりした記事だったりもする。artinfo.com の Ben Davis 氏によるこれ。

Hype and Hyperreality: Zooming in on Google Art Project(2.9.2011)

なにやらボードリヤールの「ハイパーリアル」などを引用しているところもあるが、私が共感したのはここ。

GAP がスタートしてから、「この体験はミュージアムへ行くことと置き換わるかどうか」ということがまず真っ先に取り沙汰されてるけど、
「本物をみる経験と置き換わって」しまうのかどうかが問題なのではなくて、「本物をみる経験がどう変わるのか」を探るのが重要なのでは?

たとえば、写真の技術だって、「本物の作品を観る経験」を大きく変えている。
ダリの『記憶の固執』は実際にみると、サイズが小さくてびっくりする人が多いのだけど、それは写真技術によって複製され、本に掲載され、カードにされ……、それだから「その人の中での『記憶の固執』のサイズ」が醸成されてしまっている。よって、本物のダリの『記憶の固執』を観たとき、写真がない時代ではなかった「驚き」などの経験が加わる。……というようなことを彼は述べている。

ゴッホ『星月夜』(1889)のズームアップ

GAPの可能性は、高解像度、超高解像度のズームアップにより「裸眼では見えないほどのものが見える(※ということは大きなウリのひとつになっている)」ようになることで、完全に新しいものの見方が提供されるということだ。GAP でみることが普通になったら、おそらく私たちは(私たち以上に、小さい頃から GAP で作品をみた人たちは)まったく違う「オリジナル作品との邂逅体験」をするだろう。

それ考えるだけでも、けっこうどきどきするよねー。

半分自分に言い聞かせているけど、
何事も変わっていくことは仕方がないのだ。
今、「これこそがリアル」と思っているものは、大概、以前は異端だったのである。
だから、それにより、どう世界を観る眼が変わっていくのか、自分たちが変わっていくのかを考える方が面白い。

加えて、そういう時にミュージアムは作品やミュージアム自身と人々をつなぐ新しいコミュニケーション(おいらの研究テーマでもあった「解説」もそのひとつ)を考えなければいけないわけで、なんて楽しい時代なのかしら! と私は思うのよねー。
私自身は、GAP では別に作品は観ないと思う。でも、この新しい「見方」や「作品の出会い方(本とかカードじゃなくてストリート・ビュー)」がセッティングされてくる人々はどんどん増えていくわけで、そういう意味では GAP はもう出来てしまった(出来うるべきして出来た)サービスだからこれはこれで受け入れて、その後どうなるんだろうって考えるのはすごーーく面白いなって思います。

GAP への反応(6)さっさと GAP の時代を体験しよう!

まあ、そんな観点からして素晴らしいなと思ったがコレですよ!

The Learning Network
Real vs. Virtual: Examining Works of Art Online – NYTimes.com
(2/7/2011)

NY Times には、NYT の記事を学習用に利用する方法についてアップしている The Learning Network というコーナーがあるというのを初めて知ったのだけど、そこに早速 GAP と、前エントリで引用したNYTの記事を使った学習方法(?)がアップされとりました。

概要としては、作品の現物をみること、写真でみること、デジタル・フォームでみることで、印象や体験はどう違うか? というのを実際に3種類のメディアでみて体感して、議論していきましょーというもの。その中で、GAP も体験するし、NYT の記事を読みこむ。で、記事の読解とともになんでルーヴルが参加してなかったり、MoMAの現代作品は展示されていないのかなども議論されると。最後は、自宅などでできる11のアクティビティリストがつけられている。

まーさ、先程も書いたとおり、「ミュージアムの作品がみたいっ」って日常的に GAP 観る人って(まだ)いないんじゃないかと思うし、実際、GAPってこういうことに使われるために作られたんじゃないのとすら思う。さっきも言ったとおり、変わっていくことは止められない。それによってどうなるかを考える力を養うことがきっと大事で。

だから、このエントリ自体もそうなっちゃてるけど、実はGAP をとやかく言うことは実はナンセンスなんだろう。そういう意味で、GAP の学習教材としての使い方を早々と提示したNYTは、そういう常設コーナーがあるといえどもさすがだと思った。(他にもそういうサイトあるかもだけど)

GAP への反応(7)「コンテンツ・プロバイダー」たるミュージアムはどう対応していくか?

すっごい長くなってしまったけど、最後にひとつだけ、ミュージアムの内部の人が書いた記事を紹介しておく。GAP にも参加しているスミソニアン博物館の Nancy Proctor 氏(彼女は、モバイル・ストラテジーの統括みたいな人で、アート×IT的なシンポジウムには必ずといってよいほど登壇するような方。私も修論の際、彼女書いたものや発言は参考にしました)による”Curator”への寄稿文。

The Google Art Project: a new generation of museums on the web?(2/2/2011)

超高解像度によるまったく新しい作品経験への可能性や、ミュージアム内部での画像認識と館内に対応したグーグル・マップを登場を予想したうえでのミュージアム体験の変化などの指摘は、ミュージアムとデジタルの専門家だなって感じ。実際に参加した立場として、著作権のハードルが非常に高いことにも触れられている。
が、私が面白いなと思ったのは、今回の目玉のひとつである「超高解像度の体験」は、ミュージアム側が作品を撮影することを許可しなければ根本的に提供できないもの(つまり写真等の複製物をスキャンするのでは達成できないもの)としたうえで、GAP は今後ミュージアムが、グーグルのようなパートナーと提携し新しいビジネス・モデルを生み出すことについての「思考の材料」だとしているところ。

GAP が登場した当初、ツイッター上で「インフラ押さえるとこういうことができる…美術館はIT企業からお金貰おうとグーグルにアプローチしてきたのに、完全に手玉に取られてる感じ(@tawarayasotatsu さん)」という発言があって、なるほどたしかにーと思った。
Proctor 氏が指摘しているところもまさにそこで、ちょっと前までは「コンテンツ持ってるのが優位」だったのだけど、今はそういう時代ではなくなっているところもふまえて、GAP は「コンテンツ(という言い方はすきじゃないけど)の宝庫」ともいえるミュージアムがどう対応していくのか、守るだけじゃなくてどうやって「新しいビジネス・モデルを生み出す」きっかけにするのか・・・ということを考えるよい試金石になるのだろうな。(※1)

————————–
とまあ、あれもこれもと引用して書いているうちにすっかり長文エントリになってしまいました。(いつものこと

とにもかくにも、「デジタル時代のミュージアム、いかに生くべきか」という問いはだいぶ昔からあるけど、なんとなく GAP は、体験的な意味でも、ミュージアムの(特権的ともいえる)役割の変化という意味でも、ミュージアム経営という意味でも、やっぱりひとつのターニング・ポイント、次の段階に移ったのかなって気はします。「物珍しさ」「最初の衝撃」としてはすぐ飽きられる話題なんだと思うけど、じみじみとゆーーーっくりと起こってくるはずの変化はあるはずで、それは今後もチェックしていきたす。

(※1)ちょっと文脈違うがこんな発言も
「テート・メデイアのウィル・ゴンパーツ(Will Gomperz)によると、オンライン・ネットワーキングやUGCサイトなどの新メディアによってオーディエンス拡大という大きな機会がもたらされるが、ミュージアムがこの機会を最大限に利用するには、ミュージアムの定義をそのものを変容する必要がある。つまり、ミュージアムは重要度の高い展示物を収容・収集するだけでなく、コンテンツ・ビジネスも展開しなければならない。」
ナンシー・プロクター. (2007). 「ビジターの新生 ―ミュージタム体験の作者誕生」. 『ミュージアムの活用と未来 鑑賞行動の脱領域的研究 論文集2005-2007』.  p.103.

Google Art Project に人々はどう反応したか? その2http://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/02/TheStarryNight_eyecatch-150x150.jpg*arts marketing.jp
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Google Art Project に人々はどう反応したか? その1

すっかり放置してたけど、1/31(月)に無事修士論文を提出し、あとは口頭試問と(合格できれば)発表会を残すのみとなりました。

で、ようやく気持ちが切り替わったので、今度こそブログを復活させるぞーと思っていた矢先(2/1)に発表されたのが Google Art Project(以下、GAP)。第一報を聞いたときの「へー!」という印象もさることながら、その後あっという間に、少なくとも私の周辺では「アートとITといえば」の代名詞のようになりつつある浸透力に驚いた。

こりゃ一応、アート×ITを標榜している本ブログ(と私)で触れないわけにはいかんだろう、ということで、リリース後約2週間の間に出た記事を元に、現状の反響をまとめておこうと思います。

……と書いてみたら、けっこう長くなったので、2つにわけました。汗

前半エントリの内容はこんな感じ

  • GAP の概要と背景
  • グーグルと芸術機関の関係
  • GAP への反応(1)作品をみるってそういうことじゃないよね……という批判
  • GAP への反応(2)今までもあるサービスだよという指摘
  • GAP への反応(3)著作権/新しい鑑賞体験であること/パブリックの独占

後半エントリはこんな感じ

  • GAP への反応(4)ネットとアートの20年間との断絶
  • GAP への反応(5)オリジナルに対する感覚の変化
  • GAP への反応(6)さっさと GAP の時代を体験しよう!
  • GAP への反応(7)「コンテンツ・プロバイダー」たるミュージアムはどう対応していくか?

GAP の概要と背景

GAPの特徴はいろんなところに既に出ているので簡単に、下記3点。

      Google Map で利用されているストリート・ビューの技術をミュージアム内に適応、ギャラリー内をヴァーチャルに歩くことができる。
      多くの作品が高解像度もしくは超高解像度でズームしてみることができる。
      好きな作品をキャプチャしてコレクション、共有することができる。

でもって、ローンチ時の協力ミュージアムと作品の数はこんな感じ
※詳細は Google のプレス・リリース参照

  • 17のミュージアム
  • 385のルーム
  • 486のアーティスト
  • 1,000以上の作品(超高解像度17作品※各ミュージアムにつき1作品、高解像度983作品他)
    (”エジプトの文化遺産からヴェルサイユの天井、ヴォッティチェリの『ヴィーナスの誕生』からクリス・オフィリの『No Woman, No Cry』まで”)

「世界的に有名なミュージアム」を集めたといいながら、ルーヴルやオルセーなどの入っていないが、その理由などは明らかにされていない。まあ、明らかにされていなくても「まずは静観」なのかなとか想像できるけど、ひとつ興味深いのは近年グーグルにがんがんアプローチし、Google SketchUp や Youtube を使ったプロジェクトをやっていたグッゲンハイム美術館が入っていないこと……かなり両者は蜜月だと思っていのに。

あと、ちょっと驚いたのはGAP公式サイトからだけではなく、Google Map からもアクセスことができるということ。例えば、Google Map で「Tate Britain」って検索して、テート・ブリテンの建物のところに Pegman(ズームを調整するバーの上にある人型のアイコン)を置くと、下記のように館内に入れるのだ。わお!

これからどんどん主要名所の室内とかにストリート・ビューが入ったら……本当に、Google Map の中に世界が入っていっちゃう感じ。というのを想像したらちょっと眩暈がするね。

それはさておき。

このプロジェクトは Google UK の開発者たちによるもので、グーグルの文化として有名な「20%ルール=勤務時間の20%は好きに使っていい」によってできたものだという。プロジェクト・リーダーの Amid Sood 氏は、かつてGoogle 国際プロダクト・マーケティング・マネージャーとして、ダボス会議での Google Eargh のデモに登場した経験もあるような人らしい。ちなみに GAP の開発資金は全部 Google からで、ミュージアムの持ち出しはない。技術開発のパートナーは Schematic という企業で(CNET Japan にインタビューあり↓)、開発期間は1年半。
グーグル「Art Project」の技術–協力会社幹部インタビュー(2/14/2011)

Google UK 発だからかどうかはわからないが、17のミュージアムの代表っぽい感じになっているのも同じ UK のテート・ブリテン。で、テート・ギャラリーの館長、ニコラス・セロータ(Nicholas Serota)氏は発表時にこんなブログ・エントリをしている。
A taste of the digital future for museums(2/2/2011)

まー、内容としては、これから私たちはオンライン上に作品を保存する「keepers」ではなく共有する「sharers」になるのだ……としたうえで、現代のようなデジタル・テクノロジーがミュージアムの役割と機能に挑戦している時代に何ができるか、テートはいろいろな取組をしてますよーという感じ。(※1)

※なお、テートが超高解像度用作品として選んだクリス・オフィリ(Chris Ofili)の『No woman, No Cry』についても触れられているが、GAP 上では、暗がりにしないと見えない、作品上に蛍光ペンで書かれたあるメッセージ(※2)も見られるとのこと。

グーグルと芸術機関の関係

以上が基礎情報なのだけど、GAP について書かれた記事をいくつか紹介する前に、グーグルと芸術・文化機関の関係について知ってる情報を整理しておくと以下のような感じ。

2009年7月頃から GAP の開発開始

  • 2009年11月 2003年のアメリカの侵攻により被害にあい閉館していたイラクのナショナル・ミュージアムから14,000以上の古代遺物の画像をオンライン上にアップ。
  • 2009年12月 ユネスコと提携を発表し、グーグルマップ、アース上で世界遺産をみることができるようにした。
    Google UNESCO
    と同時期に、携帯による画像検索 Google Goggles を発表。ローンチ当初から画像認識するカテゴリの中に「ミュージアム」があったかどうかはわからないけど(今はある)、2010年5月には、サンフランシスコ近代美術館で Google Goggle の画像認識実験を行っている。
    Google Goggles put to the test at SFMOMA(動画あり)
  • 2010年12月には、ユネスコがアフリカの美術館のマッピングを Google とともに行うことを発表。

グーグルの他分野での動向までチェックしていないので断定はできないけど、少なくとも2009年頃からミュージアムを含む芸術・文化機関と関係ができてきたと言えるだろうし、その頃から、それまで主にデジタル→アナログの順で文字による情報をがんがん検索できるようにしていった彼らが、文字ではないものの整理(画像検索)に移行しているのは間違いないと思われる。
※ちなみに、「アナログ書籍検索」である現在の Google Books の前身となるプロジェクトが発表されたのが2003年で、2005年には今の形のサービスを開始している。
その際に、真っ先に、長い年月「もの」や「文化」を収集・保存していったミュージアムという機関にグーグルが目を向けるのは、当然といえば当然だろう。

というかむしろ、かつて(そして今も)「世の中すべての情報を整理、検索可能にする」と言った彼らの使命は、ミュージアムの使命とかぶるところもあるのかも。デジタルの時代に出てきたミュージアムの競合と言ってもいいぐらい。。(ま、もちろん GAP リーダーの Sood 氏はリリースの中で、「GAP により、リアルのミュージアム行くことを促進したいと書いてある」と書いてあるし、それは本当にそうだと思うんだけどねー。)

なお、アートとの関係の余談としては、2010年11月に、グーグルの元CEO、現会長のエリック・シュミット氏が、美術作品共有サイト Art.sy への投資を発表したりもしてます。
※ちなみにシュミット氏は2007年 Art news のトップ200コレクターズにランクインした経験があるほどのアート・コレクターだとか

GAP への反応(1)作品をみるってそういうことじゃないよね……という批判

さて、そんなグーグルのアート・プロジェクト、やはり各所で話題になってます。WEB ニュースだけでも、総合系、テック系、アート系のサイトが1日は一斉に記事を配信している。まあ、特に第一報は皆同じような記事が多いのだけど、その中からこのエントリでは批判、批評をしている記事をピックアップしていこうと思う。

まず、お膝元の The Daily Telegraph (UK)は、初日から記事をいくつもアップしているのだけど、わりと批判的なものが多い。

たとえば、 The Daily Telegraph の美術批評家である Alastair Sooke 氏のこの記事とか。

The problem with Google’s Art Project(2/1/2011)

彼の主張はこんな感じです(かなり意訳)

  • グーグルは、GAP の中にもっとも偉大な作品があるように見せかけているけど、ルーヴルとかオルセーとか参加してないからすごく片手落ち。
  • ストリート・ビューの写真は、ブレア・ウィッチ・プロジェクトの手持ちカメラみたいに(←笑)ざらざらしてて嫌
  • てゆーか、一部しか超高解像度でみれないじゃん
  • しかも鑑賞できる作品限られている。「民主的な」モチベーションのプロジェクトにくせに、みるべき作品を選択されている!(しかもその選択の仕方、おかしい!!)
  • ま、グーグルは、将来的にすべての作品が超高解像度で見られるようにするっていってるし、そうなれば美術館に行く必要ないかもね。でも私は、自分の眼でみたいよ!
  • え、参加美術館の数とか、作品が限られていることとか、そりゃ事情はあるじゃんーー大人なのにひねくれすぎだろ!! と個人的にはおおいにツッコミましたよ(笑)。しかも、最後の「私は自分の目でみたい」云々に大しては、「グーグルのリリースにも、このプロジェクトはリアルのミュージアム行くことを促進したいと書いてありますよ」とかってコメントでたしなめられたりしていたりして、ちょっと笑った。なんというか、笑えるぐらい「GAP 眉ひそめ派」。

    それでもって、文化欄に掲載されたカルチャー系のライターさん?? Florence Waters 氏が書いた下記記事も、あまり芳しくない評価である。

    The best online culture archives(2/1/2011)

    情報が不十分だなんだと言っているけど、「これってミュージアムが利益があるっていうより、グーグルの広告じゃん」という指摘もあって、これはたしかにちょっとそうかも。と思わせるところもあり。
    でもって彼女の秀逸(?)なところは、「もっといいのがあるわよ」とばかりに既にある15の優秀な文化系デジタル・アーカイブの紹介をしているところ。その中にちゃんとグーグルのプロジェクトもあったりするのだけどね。ご興味有る方は↑チェックしてみてください。

    GAP への反応(2)今までもあるサービスだよという指摘

    まだまだ、批判は続く。
    お次はアメリカのニュース・サイトよりいくつか。

    In the end, Google’s closeups intrude on the art experience(2/10/2011)

    The Boston Globe の美術批評家 Sebastian Smee 氏による記事。こちらも、「アウラ」とかってだしちゃう時点で”典型的”とも言える反応。

    こんな感じ。(またまたひどい意訳、ごめんなさい)

    芸術ってやっぱり本物をみるものだよ。。私たちは今、テクノロジーの欲望に屈しまくっているけど、芸術はそれとはまったく別のところいるんだ。芸術とは魂で感じる経験。だから、ピクセルの画面じゃだめなんだ! アウラだよアウラ!」

    うん、わかります。

    芸術は本物をみないと感じられないことだらけ。でも、その経験と GAP、「どちらが上か」って問題じゃないんじゃないでしょうか……。

    と思ってしまうことしきりなのだが、彼の「GAP って別にイノベーティブではない。現に、既に何百ものミュージアムが、コレクション画像をアップしているし、ズームできるのもあるし、360度まわれるものだってある」というのはほんと。

    GAP のニュースを読んだとき、すぐに思い出したのは、ルーヴル美術館(彼らは今回このプロジェクトに参加していない。)が、何年か前にオンライン上で公開したヴァーチャル・ツアー。
    Virtual Tours: Medieval Louvre

    私が知らないだけで、同様のものを作っているところは他にもあるんじゃないかな。実際、「ヴァーチャル・ミュージアム」ってキーワード的には古くて、90年代後半~2000年代前半でいったんブームが去った概念とも言えるし。

    でも、今回は「ストリート・ビュー」というグーグルにとっては既存の、そして利用者としても既に多くの人に使い方、見方が浸透した技術で一括してしまったところに、すごさがあるのだと思う。ルーヴルのヴァーチャル・ツアーはちょっと操作性が悪くいろいろ回りたい気を起こさせない感じがするのだが、ストリート・ビューが操作性がいいというよりは、むしろ慣れちゃったというほうが感覚的には合っている気がするの。そこが「グーグルって怖いなあ」と思うところ。

    Smee 氏は、

    グーグルがやっていることは単に、集めること、容易にすること、大衆化すること。(aggregating, facilitating, popularizing)

    と書いているが、「単に」じゃなくて、そここそがすごいところで、ミュージアムだけではついぞできなかったところなのかなとも思う。

    GAP への反応(3)著作権/新しい鑑賞体験/パブリックの独占

    その点、NY Times の Roberta Smith 氏による Critic’s notebook は、批判の中にも冷静さを感じる。

    The Work of Art in the Age of Google(2/6/2011)

    彼女は、GAP はたしかに新しいものではないのだけど、

  • ミュージアムがウェブ上でコレクションにアクセスさせるのに10年の年月とお金がかかっていること
  • そんな中グーグルは「国連のように」ひとつのテクノロジーで異なるコレクションを集めてしまったこと
  • それによりひとつのミュージアムが同じことをした場合とは違う種類の価値を提供し、簡単なオンライン・ツアーを可能にしているところ
  • を指摘している。
    同様に、著作権の問題にも触れていて、例えば MoMA は参加しているけれど提供作品はすごく少なくて、でも GAP の”成功”が見えてきたならば、著作権処理のコストを払うだろうとしている。まあ、個人的には、「座って観る」「静けさの違い」「他の来館者がいない」等から引き起こされる GAP 経験とミュージアム経験の違いをまっさきに指摘していたのが、(私が読んだ中では)彼女だけだったのもポイント高し。

    同様に、グーグルはあくまで情報の整理をしているだけで(しかも、「デジタル化」して「アップロード」するという基本的なこと)、GAP による「鑑賞スタイルの変化」まで気を使ってないよね、と言っているのが、Washington Post の文化担当 Philip Kennicott 氏の記事

    Google Art Project: ‘Street view’ technology added to museums(2/1/2011)

    グーグル自身が明言しているのだけど、作品を選ぶことやそれをどう見せるかはミュージアム側に完全に任せているという。新しい鑑賞スタイルの提供ということであれば、心理学や生理学の専門家の意見とかも聞くのでは? ということみたいだが、まあグーグルのミッション的にそこはたしかにそこまではやらないかなー。
    また彼は、他にもグーグル・ブックスを例に出し、グーグルのパブリックの「独占」についての懸念も指摘している。

    ……とここまでは、わりと一般的な反響記事。
    ここからけっこう面白かった切り口に続くのだけど、いったんきります! 長いもの! いつもいつもごめんなさい!!

    というわけで、後半の内容はこんな感じです。

    • GAP への反応(4)ネットとアートの20年間との断絶
    • GAP への反応(5)オリジナルに対する感覚の変化
    • GAP への反応(6)さっさと GAP の時代を体験しよう!
    • GAP への反応(7)「コンテンツ・プロバイダー」たるミュージアムはどう対応していくか?

    (※1)ちなみに、何度か書いたかもだけど、私は論文でテート・モダンを事例研究に挙げたのでいつかまとめてエントリしたいとずっと思っているの。ほんとに…
    (※2)この作品は、ロンドンで黒人の少年スティーブンが巻き込まれた人種差別的な殺人事件を扱ったもの。隠されたメッセージには、”R.I.P. Stephen Lawrence 1974-1998″と書かれている。

    Google Art Project に人々はどう反応したか? その1http://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2011/02/gap_eye-150x150.jpg*arts marketing.jp
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    グルーポンとミュージアム・劇場

    うーむそういえば、今年の元旦、朝起きて、ネットにつなげて最初に目に入った記事がグルーポンおせち騒動だったなあ……。(まとめサイトっぽいので)
    うちの両親は、超がつくほどのIT音痴(というか機械音痴)でWEBサービスなぞヤフーしか知らないんじゃないか?というほどだけど、某スキャンダルのせいでツイッターのことを知っていて驚いた。
    そして、おそらくこの年始でグルーポンのことはインプットされたんだろう。やっぱり、恐るべしよテレビ(ワイドショー?)の力。

    というわけで! この騒動に乗っかるわけではないけど(笑)、昨年からぽつぽつアメリカのミュージアムや劇場がグルーポンを利用している例を目にしていて、日本もこんな流れくるかいなーと思っていたので、これを機に「ミュージアム・劇場とグルーポン」について現状をちょっとまとめてみようと思いまする。

    グルーポン販売利用の実例

    まず、実際どういったところがどんなふうに使って、どのくらい取引成立があったかを、関連記事に取り上げられていたところをざっとピックアップしてみるとこんな感じ。

    <ミュージアム>
    ブルックリン美術館/ニューヨーク(10/20/2009)
    内容:メンバーシップ&展覧会プレビュー、ブロンディのコンサート(!)
    価格:85ドル→35ドル(59%割引)
    購入者数:857名

    ポート・ディスカバリー・子供ミュージアム/ボルチモア(8/25/2010)
    内容:入館料
    価格:13ドル→6ドル(54%割引)
    購入者数:2,475名e

    アート・ギャラリー・オブ・オンタリオ/カナダ・トロント(9/8/2010)
    内容:入場料
    価格:11カナダドル→5カナダドル(55%割引)
    購入者数:4,286名

    カーネギー・ミュージアム/ピッツバーグ(9/12/2010)
    内容:年間メンバーシップ&ギフト
    価格:102ドル→40ドル(61%割引)
    購入者数:1,300名

    クリーブランド自然史博物館/クリーブランド(9/29/2010)
    内容:年間メンバーシップ(家族用)
    価格:75ドル→35ドル(53%割引)
    購入者数:1,314名

    <劇場>
    ジョフリー・バレエ/シカゴ(8/18/2010)
    内容:選べる3公演パック(定期公演)
    価格:208ドル→81ドル(61%割引)
    購入者数:2,334名

    ピッツバーグ・アイリッシュ・フェスティバル/ピッツバーグ(09/02/2010)
    内容:チケット
    価格:20ドル→12ドル(40%割引)
    購入者数:672名

    ピッツバーグ CLO/ピッツバーグ(11/1/2010)
    内容:「ミュージカル・クリスマス・キャロル」チケット
    価格:46ドル→20ドル(57%割引)
    購入者数:1,393名
    ※この公演以外にも2回グルーポン販売を行っている

    本題に行く前にちょっと付け足すと、やっぱり2009年にすでに実施していたブルックリン美術館はすごいなー。他は2010年後半だもんね。(実際グルーポンが盛り上がったのも2010年からだし…)
    いろいろ批判もあるようだけど、この美術館のソーシャル・メディア利用への貪欲さはすごい。あとで述べるけど、グルーポン実施に伴う懸念点へのフォローもこなれている。
    これはもう、「自分たちは、そうするんだ」と決めた強い意志だよね。。ま、あとで、も一度ふれます。

    ジョフリー・バレエの事例とグルーポン肯定派・否定派

    と、まあ、他にもいろいろなミュージアムや劇場がグルーポンを利用してみたようで(ピッツバーグ率が高いのは見た記事の偏りのせいw)、昨年後半は「芸術団体と共同購入」のテーマはブログなどでもわりと書かれている。
    中でも、シカゴ・トリビューン内で記事になったことで、芸術団体×グルーポンの代表的な成功例として書かれていることが多いのが、↑にも挙げたシカゴのジョフリー・バレエの事例。(なので、以降取り上げるブログも舞台芸術を念頭においたエントリが多くなる)

    Joffrey Ballet’s win-win with Groupon is a lesson for Chicago’s cultural institutions(09/03/2010)

    この記事によると、前日までグルーポン販売されたのと同種の定期会員セットは4,900名分販売されていたとのこと。おそらくその年のシーズンのチケットとして、春から販売が開始しているとして…4~5ヶ月で4,900名分売った計算になる。それが、この日1日で2,388名分売れる=約5割増ということ(!)

    記事のトーンは概ね好意的で、

    「グルーポンでの購入者は特定の演目を探しているわけではないと思うし、対象となっている舞台(くるみ割り人形のようなわかりやすいものはなく、ジョージ・バランシンやクリストファー・ウィールドンなどコンテンポラリー中心)をみたこともないだろうし、振付家の名前すらきいたこともないかもしれない」
    「でも、彼らはもっと文化消費したいという潜在的欲求もあり、ジョフリー・バレエのブランドを信じて購入した」
    「たしかに利益損失はあるだろう。でも、どちらせにせよ空席ができてしまうんだったら、いいんじゃないか?

    というようなことが書かれている。

    それに対して、肯定的に補足しているのが、このブログ(Increase Your Subscriber base by 50% In One Day 09/10/2010)で、逆に懸念点をあげているのがこのブログ(Groupon and Mass Discounting Strategies 09/29/2010

    これらのブログを含め、肯定派・否定派を適当にまとめると

    <肯定派>

    • 当面の利益は減るけど、次のシーズン買ってくれる人やもしかしたら寄付者が見つかるかも。そうじゃなかったとしても、十分露出できてプロモーションになったじゃない。
    • 定期公演という常連に支えられているものに関して、新規の観客がきてくれるのはよいことだ。
    • これからはソーシャル・コマースの時代であり遅かれ早かれ対応していかなければならない。そういった中ではグルーポンはきちんとデザインされているシステムである。
    • そもそも論として、この経済下において高すぎるチケット価格を見直す時期にあるのでは。

    <否定派>

    • 既に買ってしまった常連さんがどう思う?
    • 定価で買ってしまう人が割引にいったらどうする?
    • 割引したうえに、グルーポンは50%もってくって、利益がなさすぎる。
    • 割引購入者を継続させるには、新たな予算が必要。彼らにはロイヤリティがない。

    という感じ。この議論はまあどっちの意見も正しいので、けっこう堂々巡りになる^^;
    でも、共通の懸念点としては「定額で購入した(常連)顧客へのフォロー」というところで、ここをいかにクリアするか、捉えるかで、姿勢が決まってきているようだ。

    利用した芸術団体の評価とブルックリン美術館のフォロー

    じゃあ、実際利用した芸術団体側の人はどう評価しているのか、というのをリサーチしたのがこのブログ。

    Online Group Discounts and the Arts(09/30/2010)

    このブログの著者が調べた限りでは、グルーポン販売を利用したほとんどの芸術団体が「この試みは成功だった」と評価したそうだ。
    利益面で重大な損失はなく、購入者のほとんどがその芸術団体になじみのない「新規」の人だったこと、購入せずとも口コミが広まったこと……が評価のポイント。
    つまり、新規獲得のプロモーションとして大成功だったというわけ。グルーポンが該当の地域住民ピンポイントにメールを送ることができる(例えばピッツバーグだと10万人ぐらいのピッツバーグとその周辺住民にアプローチできるそうだ)ことも魅力としてあるらしい。
    (あとこのエントリには、グルーポンのライバルといわれているらしい Living Social も取り上げており、販売者からみたグルーポンとの違いなどもまとめられている)

    ここまでみて、グルーポンとミュージアム・劇場の現状はこんな感じであるなということがわかる。

    • 現状、グルーポンで販売すれば人が来る。
    • しかも、ほとんどが今まで見に来てくれなかった人たちが買ってくれる。
    • つまり、新規獲得プロモーションとしては効率がよい。成功報酬型だし。
    • だから、プロモーション・フィーとして考えれば利益損失はないといってもいい。
    • 懸念としては、定額で購入した(常連)顧客の心情へのフォロー。

    つまり「プロモーション」として、予算がない中他のものに出すのであれば確実、というのが特に利用した団体を中心に大方の見方のよう。

    最後の常連への懸念点に関しても、

    • そんなに気にしなくてもいいのでは。だって、常連さんは早くからスケジュールしていい席をとりたい人たちだから、グルーポンのようにギリギリまで待って買おうという人たちとモチベーションが違うはず。
    • あまり人気のない演目を販売すれば、常連さんはそもそもほしいと思わないから嫌だとも思わない。

    というような意見も出てきており、けっこう解消できそうな問題ではある。

    常連フォローといえば、先にあげたブルックリン美術館、彼らは2009年にいち早くメンバーシップをグルーポン販売したが、販売日当日のメンバーシップ担当のブログがすばらしい。

    Groupon and Discounting Membership (10/20/2010)

    曰く、

    自分達はメンバーシップの価格に対する価値に対して自信をもっており、ディスカウント販売は定価に対してサービスがその価値に見合ってないことを認めることなるからできる限りしたくない。
    しかし、一方で多くの人にブルックリン美術館を知ってもらうというミッションもある。今回実施する展覧会(「ロックンロール写真展」)とそのイベントはさまざまな人が楽しめるものだと思っており、まだブルックリン美術館になじみのない人たちに一度きてもらうために、今回プロモーションとしてグルーポン販売をすることに決めた……

    などということを、丁寧に書いている。

    まっ、言い訳じゃん、という意地悪ーーな見方だって当然できるわけだけど、
    でも、こうやってきちんと説明をすることで「説明をしない」ことより好感を持つ人は多いし、「ロックンロール写真展」というかなりポピュラーな展覧会&ブロンディのライブを販売対象にしていることで彼らのいうことにも説得力がつく。

    さすが、長年ソーシャル・メディアでのコミュニケーションをしている美術館はちゃうな、と思った次第。
    やってること自体はシンプルだし簡単だけど、なかなかこういうことをささっと、しかも担当者の顔を出して当日にエントリできる芸術団体は、まだあまりないと思う。

    グルーポンと経験経済

    さて、いろいろ書いといてなんだが、ここまでで個人的に率直に思うのは「む、つまらん!」ということだったりもするのね(笑)。
    だってさー、結局、今までアプローチできなかった親和性の高い(ここでは地域という親和性)人たちにいっぱい宣伝する、その際に安くしてあげることで新規獲得ぅ!って、ネットだけど超古典的なマス・コミュニケーションと一緒じゃん。
    しかも、始まったばかりのサービスだから新奇性があって効果が高いわけで、どこもがやりはじめ、サービス自身も大きくなって縛りが厳しくなったりしはじめたら、あっという間に効果は低くなるし、最終的に残るのは焼け野原だけ。

    と、いうような光景を社会人時代は何回も目にしてきた。

    ”新しいWEBサービスとトレンドへの目配りを常にしておいて、上昇するタイミングで同業より先にやる”

    ある程度の規模がある団体が、ある程度の規模のリターンが短期間に欲しくて行う効率的なWEBでのプロモーション、それの唯一よい手はそれだけしかないのかも、とすら思う。
    それだけならまだしも、無理なディスカウントはイメージを傷つける可能性だってある。(そもそも私は、このあたりのエントリにも書いたが値引きに懐疑的なので。)

    でも、「いやいや、グルーポンって単なるディスカウントじゃなくて、”経験経済”をもたらすサービスの可能性もあるのでは」と考察しているのが、最後に紹介したい下記のエントリ。

    Discounts, Secret Deals, and Value: Learning from Groupon(10/05/2010)

    このエントリでは、「発見することの楽しみという物語性」「(主にタイムリミットと何人がこの取引にのってくるかによって醸される)劇場性」「(ある日時限定であるという)特別感」などが、他のディスカウントとは違う要素であると言っている。
    よくミュージアムである「無料の日」や「割引の日」とは違う「知る人ぞ知る」感、それはその情報を友人と共有するときですら「内緒話」のような感覚をもたらすこと。
    そのことを「完全にパブリックで期間限定の”インサイダー経験”」と表現しており、面白いなーと思う。

    たしかに、グルーポンはネット・オークションととても似ている。
    ネット・オークションはそれ自体にゲーム性があるので、何を落とすかというよりも、その行為自体が結構楽しかったりする。

    たぶん私も、たとえばわりと好きなバレエ団の定期会員がすっごく安く購入できるる!とか、オペラや芝居で若干マイナーな演目だけどすっっごいいい席が安い!とか、オケも曲も知らんがサントリーホールのいい席とれる!みたいなのが登場したら、(最初に紹介した記事で書いていたとおり)何かが見たい、っていうよりも、「成立させるぜー!」というイベントに参加したくて買っちゃう気がする。
    (もちろん、こういうのが基本好きで安かったら見たいというそもそものモチベーションはあるけど)

    でも、そういう「経験」が、果たしてミュージアムや劇場が継続的に提供する価値がある(コストをかける意味がある)「経験」か?というのもちょっと思ったりもするのよねー。。
    逆に言えば、同じグルーポン・システムを使うにしても、提案の仕方を工夫するだけで感じる「経験」って変わるとも思う。
    そこをきちんと考えられれば、グルーポンという既存のシステムを使って、チケット購入時における人々との「つながり」や「付加価値な経験」も生み出せるかもしんないな。
    このあたりは、もう少し時間をとって考えてみたいかも。(※1)

    ※ ※ ※

    以上、土曜の午後、ワインを飲みながら、だらだらとグルーポン×ミュージアム、劇場で現状言われていることをまとめてみますた。
    本当は、ミュージアムと劇場は全然親和性が違うし、あと、定期会員的なものを購入対象にするか、一回のチケットを対象にするかでもだいぶ違うのだが、そのあたりは面倒くさくなったので、省略します(笑)。
    まあ、グルーポン自体は、わりとミソがついてしまったし、日本版は安い印象もあって……収束は早いかもしれない、けど、どこかのエントリも指摘していたとおり、ネットにおける共同購入やそれに近い仕組みはいまからこそ定着してくると思う。(そういった意味ではたのみこむは早すぎたのか…!)なので、そうなった時、ミュージアムや劇場のチケット、メンバーシップの売り方をどうするか、というのは考えていかねばらないでしょう。

    ま、あとは、、ちょっと話はそれるけど、本当によく思うのだけど、私としては、ミュージアムや劇場の運営、経営という分野で、こーゆーことが普通に話題なって実例がたまっていってそれが議論になって、最終的に新しいコミュニケーションが生まれるとよいなあと思っているの。
    けして欧米マンセーではないけど、やっぱり、普通にITやソーシャル・メディアのことをキャッチアップしてトライして、その結果を議論しているブログや記事、掲示板をみると、楽しくなっちゃうしいろいろ言いたいなあって思う。
    今年はいろいろやりたいことがあるけど、ミュージアムや劇場というフィールドで、ITやソーシャル・メディアのことを話す土壌を作っていくこと、そのためにまず、こうやって、「現状の取り組みと議論」と「それらと大きなトレンドがどうリンクしているかのマップ」を地道に作って共有していくこともそのひとつだな。

    下調べするのは意外と時間かかるけど、がんばろっと。

    続きを読む

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    謹賀新年&2010年人気エントリ・ランキング


    La Chauve-Souris (Die Fledermaus)

    新年あけましておめでとうございます!

    あけましたねー。
    思い返してみれば、2010年はひたすら種をまいた1年でした。
    個人的には、ひとまず「・自分で会社作って働く」「・営利と非営利の活動をリンクさせる」「・研究と仕事をリンクさせるために研究の作法を知る」という
    「自分が今思い描く、”やりたい生き方のスタイル”」のちいーーさいちいーーーーさいサイクルを作ってみれたことが一番の収穫かなー。

    2011年は前回のエントリでも書いたけど、なにはともあれ事業を立ち上げて本格的に「ARTS×IT」の実践を始めることと、自分がずっと心に思っている「私が大事だと思っていること、その世界」を現実化していくこと。それが目標。
    そして、地道にこつこつと「仲間」を増やしていきたいです。そのためにも、ブログでの発信はやめないつもり。

    あとは、出来る限り、出会う人々の「(ダーク・サイドならぬ)ブライト・サイド」をみること。根拠はないのだけど、それが出来る人のところに運は回ってくる時代なのだと、けっこう本気で思っています。

    というわけで、(勝手に)年始恒例の「昨年の人気エントリ・ランキング」をやります!
    2010年はあんまりエントリできてないのと、7月だったかな? サイトを内側からがらっと変えたので、若干それ以降にアップしたエントリの方がアクセス数が多い模様。
    まあ、気にせずいきましょう。

    ■第1位■
    アート・コレクター夫婦の物語『ハーブ&ドロシー』 (2010年9月28日)

    なんと!! ちょっと意外だったけど、実は、昨年のこのブログにたどりつく検索キーワードでも圧倒的に多かったのが「ハーブ&ドロシー」。
    調べてみたらハーブ&ドロシーでグーグル検索すると、一応2ページ目にあるのね……。
    11月公開後もとても好調のようで、今年はさらに全国で順次ロードショーするようです。

    ■第2位■
    「芸術」で仕事をしていくこと(2010年9月1日)

    このエントリは、読んで個人的にメッセージをくださった方が何人かいらしたこともあり、昨年、書いてよかったなと思ったエントリのひとつ。
    大学院とMCDNの活動を通じて「芸術で仕事をしていくこと」とその難しさの中で立ち止まったり、でもなんらかの形で切り開いていこうとしている人たちが大勢いることを感じていて、その潜在的なパワーは大きいのだろうなと感じつつ、でも活用できない現状を歯がゆく、もったいないと思っている。
    日本において芸術分野は、募集人員が少ない等の理由もあるけれども、ないよりも圧倒的に職種や働き方のヴァリエーションが少なすぎるような気がしている。そこを是正するためのやり方はいろいろあるだろうけど、私としては、ひとつひとつ「仕事」を産み出していく可能性を拡大したい。

    ■第3位■
    アートマネジメントの意味と歴史~アートマネージメントってなあに?<1>(2008年8月26日)

    うわー、きた。2008年のエントリだけど、本ブログ年間人気エントリ・ランキングの常連(笑)。
    「アートマネジメント」&「何か」で検索してくる人が多いからだと思うけど……
    私としては、2008年8月って、大学院入試直前で闇雲に「アート・マネジメントとは」を勉強していた頃にえっちらおっちら書いたエントリなので、今読むとなにやら小っ恥ずかしいのだが、仕方あるまい!w
    でも、大学院入ってからの方が、いろいろ「下手なことかけない」「ちゃんと調査して書かなきゃ」という気持ちが心のストッパーになっちゃってあまりエントリできなかったというのもあるので、この当時の心意気は見直すべきだなあ。

    続きのエントリはこちら
    日本のアートマネジメントって 他~アートマネジメントってなあに<2>

    ■第4位■
    美術館と解説について思ったこと(2010年8月26日)

    なんと、第3位のエントリを書いたちょうど2年後に書いたエントリ! 成長してますかしてませんかそうですか。orz
    美術館の解説、、なんて、マニアックなこと書いているエントリだけど、今読み返すと私の修論で言いたいことのエッセンスが結構まるっと入ってるエントリだなー。
    最後の方に「このあたりは在職中にこのブログを立ち上げた動機にもつながるし、インターネットのコミュニティの話にもつながってくる」と書いているが、どうつながってきていたのだよ、当時の私(笑)
    今月は論文の最終調整で仕上げに入るので、仕上げつつ、この「つながり」をじっくり考えてみるとよいかもしれない。

    ■第5位■
    現代アートが難解かつ高額な理由~「現在のアート界のルール」その1(2009年1月21日)

    「現代アート(芸術)」&「何か」で検索してくる人が多いということもあって、これも、常連エントリ。
    そしてこれも今読むとこっぱずかしいけど、まあかなり基本的な話でありつつ、意外と知らない人は知らないことなんだろうなと。

    続きのエントリはこちら
    まさに今、アート界のルールは変わる~「現在のアート界のルール」その2

    ■第6位■
    東京ガールズコレクションにあって、CHANELになかったもの(2008年4月15日)

    ひょえー!
    会社辞めたばっかりでまだアート・マネジメントの勉強するなんて思ってなかった頃のエントリ。
    エントリ内で売上データと来場者数の推移を調べて書いていたので、「東京ガールズコレクション 売上」で検索してくる人が多いのね。。
    やっぱデータとかちゃんと書いているエントリは強い。

    ■第7位■
    『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』と”I amsterdam”(2010年8月9日)

    映画タイトルで検索してきている人が多いのかと思いきや、実はそれより「I amsterdam」で検索してきている人の方が多い!
    I amsterdamについて書いている日本語のサイトでは最初に出てくるものね。。
    「I amsterdam」キャンペーンと『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』は、「街への誇りを持つ人々」の光と影という感じで面白かった。

    ■第8位■
    美術館における visitor と audience の違いとは?(2010年8月16日)

    気になったブログの記事をネタにオチなしでだらだらあーだこーだ言ってるだけのエントリだけど、ほんとはこういうのをちゃんと書いて残しておきたいし、大事だと思っている。
    今年はやるぞっと!

    ■第9位■
    赤ちゃんと、ママ・パパと、美術館。(イベント終了!) (2010年7月21日)

    去年やったイベントの中でも、やってよかったなあと思っているイベントのひとつがこの”親子で原美術館”。
    「私は、館で働いているわけでも、そのまた上の大きなところで働いているわけでもないのだけど、
    そうではないからこそ考えられる『地道なもうひとつの道』を考えて実践していければよいなあと、思う。」と書いている「地道なもうひとつの道」を今年は開拓したい。

    ■第10位■
    世界一展覧会に行く国民、日本人!?(2008年9月30日)

    これも常連エントリです。世界展覧会観客動員数データなどをきっちりのせているのも、いまだにアクセスがある一因だと思うけど、やっぱこれに限らず常にアクセスがあるエントリは「え、日本人って世界一展覧会に行ってるの?」とか「現代アートが難解で高額な理由はなによ?」とか、心に「?」を浮かばせられるエントリ・タイトルのものなんだな。あとはちゃんと調べたもの。

    続きのエントリはこちら
    メディアと美術館の長いながい蜜月~日本独自の鑑賞スタイル<その2>
    上海とアート&幻の1位のトホホな理由。~日本独自の鑑賞スタイル<番外編>

    ……以上が、昨年のランキングでした。
    アート・マネジメントの基本を扱った系エントリはやはりつよし。
    今年はいっぱいエントリして、もう少し毛色の違う、会社いたとき書いてたようなIT系とかのエントリ増やしていこうかなとも思っとります。まあ、一応大学院修了のはずだし(できれば)。

    というわけで、今年もどうぞよろしくお願いいたします!

    ※ちなみに10位以下20位まではこんな感じ。
    このへんにくるとけっこう内容にバリエーションが出てくるね。
    ■第11位■続・芸術好きになるもならぬも、親次第(かな) (2010年7月4日)
    ■第12位■ザ・プロフェッショナル 植村秀(2008年6月26日)
    ■第13位■イベント終了!&「ミュージアム×ソーシャル・メディア」PPT、2種類UP(2010年7月2日)
    ■第14位■「『ほんもの』ってなんなんだよ?」という話(2010年1月3日)
    ■第15位■フランスの大学入試試験(2008年10月15日)
    ■第16位■オペラ座の怪人、続編!(2009年3月28日)
    ■第17位■ホイットニー美術館のTwitter Tour(2008年3月24日)
    ■第18位■クラシックコンサートに使える金額~チケットのお値段 その2(2009年3月8日)
    ■第19位■ポリスのライブにダフ屋がいなかった理由~『ライブ・エンタテインメント新世紀』(2008年2月15日)
    ■第20位■「参加型」への違和感と、ボイスの「すべての人は芸術家である」(2010年2月5日)

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    修論ひとまず提出&今後のこと&いくつかの言葉。

    はあ、だいぶとご無沙汰してしまったブログ!
    前に書いたのは9月……。

    秋から冬は、論文、そしてその他の活動や仕込みで忙しい毎日だった。
    で、ようやく今日、論文の初稿を提出することが出来、一段落ついているところ。
    とはいえ、本提出は1月末で、これからどのくらい修正がかかるかわからないわけだけど……。

    とりあえず今は、修正が指示される面談までちょっと一息で、今日の午後に提出した後は、早速軽いお仕事関係の打ち合わせが入り、雑談も刺激的なおかげもあって脳みそも徐々に「論文モード」から「お仕事モード」的な方へシフトいきました。よい感じだー^^ 

    で、これからのことは、おいおいブログに書こうと思うけど、来年はとりあえず、自分で立ち上げた会社で主にネット関係で事業をいろいろ立ち上げることをメインにやっていこうと思っている(そうそう、12月16日で、一応立ち上げ1周年ですた! 祝う余裕もなく論文書いてたけど汗)
    このブログも、いろいろ紆余曲折したけど(笑)、やっぱりずっと前に書いていた、「ITとソーシャル・メディアと、ビジネス」そして「芸術」の話になっていくかと思う。一端、仕切りなおそうかな。てか、こんどこそ書くぞー!
    で、来年たちあげる予定の事業も、どのようなものにせよ、形は違えどアート×ITってこういうのが可能じゃない? という提案が入るものになると思う。……私はやっぱりネット・コミュニティ・ビジネスの人だとこの2年で痛感したし、結局、自信が一番持てること、そして興味がある分野はそこなので。

    あと、このブログでも何度か書いた Museum Career Development Network(MCDN)の活動も、来年はより活発にやっていく予定。
    今、置かれている立場を最大限の活用して、今以上に面白い人に会えるようセッティングをしてその知や経験を共有するような場づくりもしたいし、MCDN名義でもいろいろ事業が出来ればいいなと思ってるし(そもそも、MCDNは自分で仕事を作っていく人が増えて欲しい、というための組織だしね!)、今は二人でやってるMCDNだけど、来年はもっと理念に共鳴してくれる人にイニシアティブをもってもらって、こちらが提供できるリソースを最大限に活用してもらいつつ自主的な活動もいろいろやってもらえるようなスキームを作れたらよいなあとなんとなく思っている。
    ブログではイベントの告知はおろか、全然やってることの紹介や事務局長個人としてやりたいと思っているイメージなど書けなかったけど、これからはできたらよいなあ。

    とはいえ。
    2年の研究活動も、非常に有意義で贅沢な時間となったことはたしか。また、自分の事業で稼ぐスキルを身につけ、もう少し研究内容を研ぎ澄ますことができたら、近年中にどういった形でかはわからないけど(いわゆる「博士課程」というのではない気がするけど……)自分の問題意識をもっと先鋭化させて、もう一度ちゃんと研究もしたいなーと思うし。

    私は結局、美術館におけるモバイル・メディアの今日的意義、というテーマを「解説」という切り口で論文を書くことにしたのだけど。
    でもそれは、iPhone や iPad 使ったらどうの、ソーシャル・メディアだからどうの、という話ではなくて、「芸術を見ることの奥底にある、人生を変えるかもしれないぐらい強い「何か」を伝えることがどれだけ大事か、美術館が一番得意としていて、そして美術館こそが率先してやらなければならない使命はそこなのではないか」というのを伝えたかった、そのつもり。(どこまで出来てるか;;)
    で、今後、どういうアウトプットにせよ、言いたいことはそこに尽きるつもり。
    それを、ただ「言う」だけじゃなくて、どう事業化できるかを、来年以降は少し試したい、とそんなことを思っている。
    そういうことを共有できる人を少しずつ集めていくためにも、MCDNの活動や、あとはこのブログも結構大事なツールだなと改めて感じている。
    だから、ブログは死んだとか死んでないとか、いろいろ言われている昨今だけど、私はツイッターよりかは自分のことが語れる場で今でもすごく有効なメディアだと思っているので、続けていく所存ー。がんばるー

    そんなわけで、
    復活エントリー第一弾は軽く……、私が論文を書く中で出会ったいくつかの言葉、論文書くのすげー辛いーと投げたくなった時に読み返して「うん、言いたいことの方向性は間違ってない」と励まされた言葉をいくつか紹介しときます。

    ひとつはシカゴ美術館館長ジェイムズ・クノー氏の言葉。

    しかし、私たちは誰もが、一点の作品の前に立ち、その作品の力に圧倒され、展覧会の「命題」を忘れてしまう経験を持っている。
    ステファン・グリーンブラッドは、この特殊で力強い経験を「驚異」と呼んだ。
    それは「会場を歩く鑑賞者を立ち止まらせ、唯一無二のものという感覚によって鑑賞者を釘付けにし、夢中で見つめさせるような、展示された<もの>の力」の中にある。
    私は美術館の目的の一環として、また美術館と市民の契約において肝要なものとして、この「驚異」の感覚を取り戻したいと思った。

    もうひとつは、当時ナショナル・ギャラリー館長、現・大英博物館館長ニール・マグレガー氏の言葉。

    作品は物質的な存在であると同時に、その作品を見る人を別の時空に導き、その純粋な美的体験によって見る人のなかに変化を引き起こすことができます。
    この二重性は、芸術の持つ文化的あるいは美的な力によるものですが、この考え方をさらに敷衍すれば、美術館には社会変革をもたらす可能性が秘められていると考えられているのではないでしょうか。

    他にもいっぱいあるのだけど最後に、この論文を書く作業の中で、口頭で出会った言葉。よくわからないので、一応論文が公表されるまでは(論文では引用しているので)名を伏せて……でもこれを言われたことで、私は自分が言いたいことに最後、自信が持てた。そんな言葉です。

    アートを通して「スピリット」を伝えなきゃいけない。
    アートは一個ずつの事象ではなく、アートというフィールドの奥にあるものの考え方、態度が一番大事なのだ。
    (その考え方、態度とは)何者にも囚われない自由な発想、人の真似をしない、繰り返さない、いろいろな状況に対してフレキシブルにものを考える、そういったものの媒介になっているのがアートのスピリットでありクリエイティビティである。
    一番奥にあるスピリットが伝わらなきゃしょうがない。(中略)

    展覧会ではなかなかそこまで直接的には言えないけど、言語によってはできる。
    解説が何を伝えるべきかというのはそういうところであり、スピリットを伝えなくてはいけない。

    どんなことをするにしても、これらの言葉は私の心の支えであり、自分のやりたいことの源にある力かなと思う。
    それがわかっただけでも、この大学院で研究という(私からしたら恐れ多いほどの)広大で深遠な分野の端緒につけて、良かった。

    というわけで年末は、今まで読めなかった種類の本なんかも読みつつ、今までちょろっとツイッターに書いたり、それすら書かずじまいに終わっていたニュースなんかの深堀りなんかも、少しずつこのブログにアウトプットする作業をしていきたいなと思います。

    IMG_0055

    んでも、まずは、公開前に書こうと思って書けなかった映画『バスキアのすべて』の話かな(笑)

    修論ひとまず提出&今後のこと&いくつかの言葉。http://artsmarketing.jp/wp-content/uploads/2010/12/1222-150x150.jpg*arts marketing.jp
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