- Jun 13, 2008
- #BLOG
現在開催中のCHANEL MOBILE ARTを観に、代々木へ。
無料かつ完全予約制のこのイベント、
ファッション誌でもかなりとりあげられていたこともあり、今はチケット完売だそうです。
7月まであるのに
ひー
私は、だいぶ前にお知らせをもらった時に、
「どうせ平日の昼間とか暇やしー」と思って何気なく予約をしていたのだけど、
心の中では、
シャネルが現代アートを集めた、こじゃれたいけすかない(失礼)展覧会なのかなー
ぐらいにしか思っていなかった。というのも、事実です。ハイ
しかし
しかし、
これはものすごい”イベント”だった。
(not 展覧会)
■CHANELをモチーフにした単なる現代アート展・・・?
このイベントの概要を説明すると、
入口で装着されたヘッドフォンから聞こえてくる、女性の声(少ししわがれた、魔女のような・・・たぶんオノ・ヨーコさんではないかとのこと)に導かれて館内を回るというもの。
現代アーティスト20名が、シャネルのキルティングバッグを題材にした作品を提供している。
日本からはアラーキー、束芋、オノ・ヨーコなどかなりメジャーどころ
海外のアーティストは知らない方ばかりだったけど、おそらく錚々たるメンツに違いない。
んが、
しかしそこは現代アートなので、一見したところ
「なんじゃこりゃ?」or「はー、なるほど。おもしろいけど・・・」のものが、正直多い。
これらを展示されていただけでは、
もちろん、話題になっていた可動式建築、その流線型を描く室内での展示への面白さや、
仮設とは思えない立派さ、そして各作品ごとの興味などはあれども、
「普通の展覧会だったな。でもまあ無料だし、すごいよね」
と思ったと思う。
でも、このイベントを「すげー」と思ったのは、
このオーディオガイドのクオリティである。
■”魔女”に導かれている、ロールプレイング的な不思議の国
もちろん、このオーディオガイド、
よく美術館であるような、作品の前に行って番号を押して説明を聞くようなものではない。
(説明なんて一切ない)
展示の最初から最後までをひとつの世界観でまとめあげる、ストーリーテラーの役目を果たしている。
「絶望の中で・・・あなたを待っておりました。」
「立ち上がってください。そして、左へ進んでください」
ちゃんとは覚えてないのでもちろん適当だけど、
こんなふうな始まりで、中へと誘われる。
「菱形の海。」
「少し、感じていてください」
などなど、作品に応じて、さまざまな言葉が投げかけられる。
そして、
「さあ、そろそろ行きましょう。階段をのぼって」
「もっと奥へ」
と、次の作品に行くタイミングも完全にコントロールされている。
(なので、このイベントを楽しむ時間は誰でも40分だ)
だから・・・展覧会というより、40分の「体験」なのだ。
パンフレットに書いてあった「3D映画」「歩きながら体験する文化的風景」、そんな言葉があてはまる。
あ、なんか、この道を誘われる感じは、ロールプレイング的ともいえるかもしれない。
※立ち上がってください、と言われ、中へ中へと、ゆらゆらと進んでいく感覚は、今は言葉では表せないけど、不思議なものだった。
このあたりの感覚ってなんなんだろう。
■音とセリフで、心がオープンになる
この仕掛けが素晴らしいのは、
もちろん、単なる展覧会ではない、別の体験ができる、ということはもちろんのこと、
「・・・?」で通り過ぎられる可能性も高い現代アートの作品を、
無理なく、その世界に没入させるきっかけを与えているというところだ。
この「魔女」に手をとられ歩いていることで、
作品たちは「不可解なアート作品」ではなく、「不思議の国にあるオブジェ」のように思える。
不思議の国でそっと井戸の中をのぞきこむような、そんな感覚に襲われるので、
観ること、感じることに心がオープンになっている。
現代アートは、昔は結構観にいったけど(そういう時期ってありますよね)
こんなふうに感じたことは初めての経験だ。
ああ、こういうふうに鑑賞させる手があったのか、と思った。
もらったパンフレット(これがまた、アート写真誌purpleの編集による、ABCの洋書コーナーあたりで買ったらウン千円しそうな豪華なもの!!が無料で来場者全員に!!!)にあった、
シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドのインタビューを読む限り、
おそらくラガーフェルド氏は現代アート、特に投資とビジネス、社会的地位の対象となった現代アートに
強く不満を感じているし、面白みも感じておらず、
趣味は貴族趣味で(「ヴェルサイユ宮殿が建築の最高傑作」)華やかで美しいものが好き。
だからこそ、逆にこういう発想にいたったのかなあという気もする。
■気になるキュレーターは
で、
こういうイベントがあると「プロデュースしたのは誰?」というのが気になるワタクシですが、
(今回は、実質的にはラガーフェルド氏プロデュースであり、彼の美意識のようなものがかなり大きかったのではないかと思うけど)
キュレーターは、ファブリス・ブストー Fabrice Bousteauという、アート誌「ボザール」フランス版の編集長。
(写真一番左/真中の女性が建築を担当したザハ・ハディド、一番右はラガーフェルド)
同じく、パンフレットでのインタビューでこんなことを語っている。
まず念頭に置いたのは、ものとしてのアートとか、インスタレーションの展覧会には絶対にしないということです。(中略)
世界の偉大なる文化都市の都市空間に「接続」して、移動することのできる風景を建設しようとしたのです。
人々が入れる、ある種の「心地よい空間」です。そして、鑑賞者を変容させ、彼らの認識や世界観を変えるのです。
おそらく、このイベント自体、そしてオーディオガイドにかなりはっきりした世界観があるので、
20人のアーティストとの、世界観や意識のチューニングは相当苦労したのではないかと思う。
アーティスト一人一人が強烈に「自分」を押しだしてくるわけで、本来ならば20の別々の世界があるはずのところを、ひとつの風景の中にまとめあげるわけだから、ね。
でも、それが上手くまとまっていた手腕が素晴らしいと思った。
おかげで、シャネルすげーインプットが私の中でできてしまったし(笑)。
(以前、シャネルを揶揄するようなエントリーも書いたけど笑←これも、シャネルを揶揄したわけじゃないんだけどね)
■リアルスペースでの”ちょっとしたトリップ”を提供するSoundWalk社
そして、それに一役かったのが、
再三言ってるとおり、「オーディオガイド」である。
それがなければ、決して生み出されなかったであろう世界。
両耳を閉じられることで、まんまとトリップしてしまった私たち。
音楽とセリフの力ってすごい。
このオーディオガイドはSoundWalk社というところのものらしい。
ステファン・クラスニャンスキ Stephan Crasneansckiという写真家がコンセプトを設計。
(ちなみに、公式サイトに載っているアーティスト写真は彼が撮ったらしい。どれも素敵)
SoundWalk社は今までも、
NYやパリの街を歩く際のオーディオガイド
NYやロンドンのジョギングコースに合わせたオーディオガイド
ルーブル美術館での「ダ・ヴィンチ・コード」の世界に合わせたオーディオガイド
などなどを、やはり個性的な視点で制作しているらしい。
これも、リアルスペースでの音と物語によるちょっとしたトリップが展開されているのか。
こういうのってけっこう好き。
聴いて、歩いてみたいな。
■”創り出す”ことに興味がある人はぜひ・・・
以上、カンジンの作品について、なんにも述べませんでしたが・・・(笑)
まあ、なんかひとつひとつの心に残った作品をうだうだ言うのではなく、全体を感じてみな、
という印象がすごく強いので、まあ、いいや。
(一番好きだったのは、レアンドロ エルリッヒ Leandro Erlichというアルゼンチンのアーティストの作品。
狭い空間で水たまりに街並みが映って・・・ってほら、やっぱり、文字では説明できない。
公式サイトを覗いたら、他のもけっこう惹かれるものがあった。)
とにかく、
現代アート、つまんない、とか、
ラグジュアリーブランドのイベントなんてヤーダヨ、とか
そういう人もぜひ行ってほしい、
そんな、インスパイアに溢れたイベントでした。
幸運にもチケットをゲットされた方は、ぜひ体験されることをオススメしますん
※公式ブログはコチラ
ここで、作品の説明や鑑賞ガイドをみることができます
PS
CHANELのアート活動を調べてみたところ、
他でも地道に行っていて・・・若手音楽家の支援ミニコンサートとか、一度どういう感じが覗きにいってみようかと思ってたり。
別にCHANEL好きじゃないし、企業とアートの関係とかって広く気にしてるんだけど、今年はファッションショーに始まり、なぜか”呼ばれる”なあ。
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